本研究の目的は,より幅広い調合条件におけるコンクリートの圧密特性を明らかにすることで,これまでに研究代表者が提案した改良型透水・脱水モデルの適用範囲を拡張し,透水・脱水工法を行ったコンクリートにおける表層からの品質改善効果を定量的に評価・推定できるモデルを構築することである。 補助事業期間を延長した2022年度は,モルタルおよびコンクリートにおいて未実施であった実験水準について改良型圧密試験装置を用いて圧密試験を実施し,調合条件および圧密圧力がモルタルおよびコンクリートの脱水量や硬化後の単位容積質量,圧縮強度およびセメント水比に及ぼす影響を検討した。その結果,モルタルおよびコンクリートともに,①脱水量と単位水量に強い相関がある,②無処理ではブリーディングの影響で上層ほど若干単位容積質量が小さくなるが,圧密処理を行うと全層にわたって単位容積質量が大きくなる,③無処理ではブリーディングの影響で上層ほど若干圧縮強度が小さくなるが,圧密処理を行うと全層にわたって圧縮強度が大きくなる,④単位容積量が大きいほど圧縮強度が大きくなる,⑤単位容積質量とセメント水比には相関関係がある,⑥圧縮強度とセメント水比には相関関係があることなどが分かった。 圧密係数については,原因は不明であるが,圧密曲線の極初期において歪な曲線となり理論圧密度50%になる時間を判別できない実験水準が多くあったため,傾向を明らかにできなかった。そのため本研究では,真空脱水コンクリートおよび透水性型枠コンクリートの実大供試体における単位容積質量,圧縮強度およびセメント水比の分布の把握と,調合条件および圧密圧力がモルタルおよびコンクリートの脱水量や硬化後の単位容積質量,圧縮強度およびセメント水比の分布に及ぼす影響を明らかにしたが,品質改善効果を定量的に評価・推定するモデルの構築までには至らなかった。
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