研究課題/領域番号 |
18K04451
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
都祭 弘幸 福山大学, 工学部, 教授 (20736714)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エネルギー吸収性能 / 損傷抑制 / ヒンジ領域 / 残留変形 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究からヒンジ部損傷抑制コアは,a)せん断余裕度を下げる要因となる曲げ強度を上昇させない,b)見かけ上のせん断応力を低下させる,c)せん断ひび割れの拡大を抑えせん断変形の増大を抑制する,d)従来構造よりも履歴ループを改善しエネルギー吸収量が増大する,性能を有することが確認できた。2019年度は,これらの性能を一般化するためにヒンジ部に不利な条件となるせん断応力度レベルが高い場合(τu/σB ≒0.1)について実験的な検討を行った。 研究方法は,せん断応力度レベルτu/σB ≒0.1の従来梁(2段配筋・中子筋有り)と同じτu/σB のヒンジ部損傷抑制コアを有する提案梁(pwは同じだが中子筋無し)とを構造実験により比較検討した。提案梁の中子筋無しとした理由は,配筋の簡略化のためである。パラメータは,長周期地震に対するコアの効果を検討するために載荷履歴回数の大小,ダボ筋の効果を検討するためにダボ筋の有無,とした。試験体は従来梁を含め縮尺1/2のRC梁部材4体である。 実験結果の検討から,τu/σB ≒0.1の場合,ヒンジ部損傷抑制コアの目標性能として掲げた,a),b)はτu/σB ≒0.05の場合と同等であった。しかし,c)に関してはせん断応力度が高いので効果が主筋降伏以降に限定された。また,d)に関しては主筋降伏部材角までは繰り返し回数が増加するほどコア有りの方がエネルギー吸収量が大きくなること,大変形R=1/50rad以降では中子筋が無いことによる影響によりエネルギー吸収量は従来梁と同程度となった。コアは長周期地震のような繰り返し回数が多い外力に対して効果があることが確認できた。ダボ筋の有無による構造特性への差異は認められなかった。また,せん断応力度レベルが高い場合,大変形域までコア効果を期待するためにはトラス機構断面積を考慮する必要があることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は企業5社との共同研究により推進しているので,企業専門技術者のアドバイスもあり計画的に進められているため。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の実験研究から,せん断応力度レベル(τu/σB)が0.05程度の場合,従来梁と比較して主筋降伏以前の定常ループにおいてエネルギー吸収性能を改善できること,せん断ひび割れ強度を1割程度高めることができること,などを確認することができた。2019年度の実験研究から,τu/σBが高い場合(0.1程度)でも長周期地震へのコア効果が確認されたが,主筋降伏以降の部材角ではトラス機構断面の大小に起因するヒンジ部のコンクリート劣化に差異が生じることが分かった。 2020年度の研究は,τu/σBが高い場合(0.1程度)の場合の提案梁における配筋方法改善について検討する。また,過去2年間と同様に企業5社との共同研究を実施し,実務者の意見を反映させた研究とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りの使用額であったが,節約や綿密な打ち合わせおよび前年度繰越金(22,032円)を含めて実支出額比1.6%を翌年度分に充てることができた。 当初の計画では,次年度に特許申請を行う予定であったが,共同研究化することにより今年度中に特許出願が実施できた。そこで,次年度の予算および今年度からの繰越金は,今年度の実験研究で確認された改良点に関する追加実験用の試験体制作費の一部として補填する。
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