2018年度および2019年度に実施した構造実験から,ヒンジ部損傷抑制コアは曲げ降伏型梁部材のせん断変形の抑制だけでなく,荷重除荷後の再載荷域における剛性を高めることによって定常ループを改善(エネルギー吸収を向上させる)させる効果があることが確認された。しかし,R=1/67以降の変形段階では2018年度の実験のような差異が見られなかった。 この結果を受け2020年度の研究内容は,(1)2018年度と2019年度に実施した構造実験結果の分析,および(2)損傷抑制コアの有無に関する解析的な検討,を行った。 実験結果の分析より,損傷抑制コアの効果(再載荷時剛性の改善)をさらに高めるためには梁端フェイス位置におけるダボ効果を発揮させる必要があること,せん断応力度レベルが高い場合には中子筋を配筋する必要があることが確認された。今後の自主研究による課題となるが,ファイス位置へのひび割れ制御方法ならびに損傷抑制コアを有する場合の中子筋配筋方法を考案することができた。 2018年度の試験体BN-1とBC-1,2019年度の試験体BN-2とBC-5について解析的な検討により損傷抑制コアの効果を検証した。有限要素法解析ツールはFINALであり,解析モデルは2次元モデルである。解析結果より,耐力やひび割れ性状におけるヒンジ部損傷抑制コアによる定性的な効果が確認できた。ただし,損傷抑制コア内部の応力や損傷については2次元モデルでは検討できないので3次元モデルでの検討が必要である。
|