研究課題/領域番号 |
18K04452
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
堺 純一 福岡大学, 工学部, 教授 (30215587)
|
研究分担者 |
田中 照久 福岡大学, 工学部, 助教 (90588667)
倉富 洋 福岡大学, 工学部, 助教 (50709623)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 鋼コンクリート合成構造 / 耐震性能 / 柱部材 / 拘束効果 / 寸法効果 / 付着 |
研究実績の概要 |
十字鉄骨とコンクリートで構成された八角形断面の鋼コンクリート合成柱(以下SC柱)の耐震性能について実験的に調べた.本研究では,現場での施工性の省力化・省人化を進めるとともに,高耐震性を実現できる構造骨組の実現を目指している.特に,柱を本SC材とし,梁を鉄骨造とすることにより力学的に合理的な構造骨組が実現できると考えられる.一般的にSRC造であれば柱梁接合部のディテールは複雑となるが,本SC柱では梁鉄骨の曲げ応力を外ダイアフラムとバンドプレートを介して柱に伝えさせるため,簡素化したディテールの柱梁接合部が実現できることを明らかにしている.一方,梁のせん断力は一旦,柱鉄骨に伝え,柱鉄骨からコンクリートへ伝えさせるが,鉄とコンクリートの付着強度は小さいことから対策が必要である.そこで,本研究では,柱鉄骨ウエブに機械的ずれ止めを設けることとし,ずれ止めの効果的な設置法を明らかにすることを目的とした.今回は機械的ずれ止めとして,バーリングジベルを用いており,その設置数を主なパラメータとし,5体の柱試験体を製作し載荷実験を行った.載荷実験では,柱の圧縮耐力の30%の軸力を載荷し,一定に保持した状態で正負交番の繰返し水平力を載荷している.柱頭部には不利な条件となるように5cm高さのコンクリートの空隙を設け,柱頭部では軸力と水平力を鉄骨だけに負担させた条件としている.実験の結果,鉄とコンクリートの付着だけでは柱脚部で鉄とコンクリートが一体となった合成断面の性能を発揮することが難しい.バーリングを8個設置した場合にも合成効果は十分とは言えない.16個配置することにより,柱脚部で合成効果が発揮されることがわかった.また,柱鉄骨を現場で高力ボルト摩擦接合させる条件の試験体も製作したが,添板およびボルトナットが機械的ずれ止めの役割を十分果たし,合成断面としての性能を発揮できることがわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度(2年目)の研究として,当初は柱梁接合部の耐震性能を調べることを想定していたが,2018年度のSC柱材の実験結果を分析することで,建築構造物の耐震性能を十分発揮させるためには,鋼とコンクリート間の応力伝達を確実にしておくことが望ましいことがわかった.その応力伝達法を確実にするための条件を2019年度に実験的に明らかにできた.省人化・省力化・高耐震性を目指した建築構造骨組の設計法を提案する上で,本SC柱の耐震性能を発揮させるための条件を明らかにできたことは,大きな成果であると評価できる.
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度,2019年度で,本研究で対象とする八角形SC柱の弾塑性変形性状を調べ,優れた耐震性能を保持していることを明らかとした.2020年度は,この八角形SC柱と鉄骨梁で構成された骨組を想定し,柱梁接合部のディテールについて解析的に調べる.特に,力学的に合理的で施工性に優れたディテールの提案を行う.SC柱と鉄骨梁で構成された柱梁接合部については以前実験を行っており,その実験結果をFEM解析で追跡し,さらにパラメトリックに解析することにより,さらに力学的に合理的な接合部のディテールの提案を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の支出のほとんどは試験体製作費で使用した.その残額が8,253円であり, 2020年度の研究費として使用する予定である.
|