研究課題/領域番号 |
18K04454
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
郡 公子 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 教授 (20153504)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高性能ファサード / 空調設計用気象条件 / 外気導入制御 / 昼光利用制御 |
研究実績の概要 |
(1)高性能ファサードの動向調査:ルーバをもつファサードについて、ルーバの形態分類と省エネルギー性の数値解析を行った。また、緑化ファサードについて、文献調査による事例収集と分析を行い、緑化手法や緑化面積の分類整理をした。緑化ファサードは2000年から増加していて、バルコニーの前面を覆うタイプやネット型、鉢植え型など種類があり、窓面緑被率は40%以下の事例が多いことなどがわかった。 (2)高性能建築のための空調設計用気象データの作成法検討:従来の空調設計用気象データに対して、過酷気象を選定するための気象観測値が20年から30年に増えたことから、改めて過酷気象の選定法と危険率の検討を行い、冷房設計用は作成可能な最も安全な危険率の設計用気象データを中心に作成することととし、暖房設計用は従来通り危険率1%の設計用気象データを中心に作成する方針とした。これは温暖化の傾向を考慮したものである。また、直散分離法としてPerezの方法を採用するなどの改良も行った。 (3)高性能ファサードと外気導入制御の効果推定法の開発:外気導入制御として、外気冷房、最小外気量制御、全熱交換器による熱回収などの機械換気における省エネ制御とともに自然換気制御も含めて、効果推定するために、熱負荷計算法の改良を行った。自然換気については、建物全体の風量収支を解かない実用計算法について、種々の自然換気許可条件の効果を推定できるようにし、機械換気制御との組合せ効果を数値計算により確認した。同時に、建物全体の風量収支と熱・換気平衡を解く詳細計算法の開発にも着手した。 (4)高性能ファサードと空調の融合設計のための評価:Low-Eペアガラスのガラス建築に対して、ブラインド自動制御と調光制御による昼光利用を導入してファサードを高性能化する手法を取り上げ、空調・照明の省エネルギー効果の評価法を提案し、数値解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定した研究項目全てについて研究を行い、成果を得ることができた。さらに、当初の計画に含めていなかった項目についても研究を進めることができた。それは、昼光利用制御可能な高性能ファサードの省エネルギー評価に関するもので、評価法を提案するとともに、空調・照明エネルギーに及ぼす効果を評価できた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)高性能ファサードの動向調査と数値解析:昨年に引続き、日射遮蔽性を高めるファサードの設計法に関する事例調査を進めるとともに、代表的あるいは特徴的なファサード設計手法による空調熱負荷低減効果を推定評価する。 (2)国内836地点の空調設計用気象データの開発:新しい空調設計用気象データの作成法に関する検討が終了したので、国内836地点の設計用気象データを作成し、それを用いた数値計算から得られる最大熱負荷の地域性を分析するとともに、設計用気象データの公開の準備を行う。 (3)外気導入制御の評価法の開発と数値解析:建物全体の風量収支を解き、熱・換気平衡を解く詳細計算法に対して、さらに自然換気口の開閉操作により室温制御を行う場合の効果を推定評価する方法を開発する。 (4)高性能ファサードの地域的性評価:種々の高性能ファサードによる空調熱負荷低減効果の地域による違いを数値計算により分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に行った数値解析は、現有パソコンで可能であったため、パソコンの購入を見送った。次年度には演算処理に長時間を要する数値計算を予定しているため、最新の高速パソコンを購入して研究を行う計画である。次年度に新たに配分される予算については、研究代表者、研究協力者の学会発表などのための旅費、学外研究者を招いて研究指導して頂く謝金、消耗品類の購入に使用する計画である。
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