研究課題/領域番号 |
18K04460
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
岡本 則子 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (00452912)
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研究分担者 |
富来 礼次 大分大学, 理工学部, 准教授 (20420648)
大鶴 徹 大分大学, 理工学部, 教授 (30152193)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 吸音率 / 建築材料 / in-situ測定 / ランダム入射 / アンサンブル平均 |
研究実績の概要 |
本研究は,建築材料のランダム入射吸音率の実用的評価法の開発を目的とする.具体的には,アンサンブル平均による建築材料の吸音特性測定法(EA法)による吸音特性,すなわち,EA法によるランダム入射時のノーマル音響インピーダンスを用いたランダム入射吸音率の評価手法を構築し,従来法(残響室法,音響管法)による吸音率との比較を通して,適用範囲を明らかにすることを目標としている.令和元年度は,研究2年目として以下を実施した. 1. EA法による吸音率と従来法による吸音率の比較:4種の材料を対象に,それぞれの手法により測定を行った研究初年度の結果を用いて,EA法による吸音率を,音響管法による垂直入射吸音率および残響室法吸音率(ランダム入射吸音率の近似値)と試行的に比較した.EA法と従来法の吸音率の間に差は認められるものの,広帯域に渡り,それぞれの材料の特徴に応じて同様に測定値が変化することを確認した.また,材料や周波数によらず,EA法による吸音率との相関が高いのは,残響室法吸音率であった.一方で,同一材料でも音響管の測定値にはばらつきが認められた.また,EA法についても,音圧-粒子速度センサの校正用の管の違いや測定環境の違い(気流,湿度など)で,測定値に差が生じることを確認した. 2. ランダム入射吸音率の算出式の適用範囲の明確化:前述のEA法による測定値から,ランダム入射吸音率として統計入射吸音率を算出した.適用範囲については,前述のEA法と音響管法による測定精度を向上させた後に検討することとした. 3. 音響管の製作:音響管法とEA法の測定精度向上に向け,それぞれの測定で使用する音響管を設計・製作した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各手法の実験結果が重要な本研究に対して,実験環境は概ね整っており,順調に進展していると考える.ランダム入射吸音率の算出式の適用範囲の明確化については,一部の検討を次年度に行うこととした.計画とやや異なる展開となってはいるものの,測定値に左右される本研究において,より確からしい測定値を得ることは重要であるため,「研究実績の概要」で示した課題解決に取り組むことを優先した.時間の要する測定装置の改良と製作は概ね終了しているため,研究最終年度に,円滑な検討が遂行できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後,引き継き,以下の検討を実施する予定である. 1. 音響管法・残響室法による吸音率とEAによる吸音率の比較 まず,前年度に改良した音響管を用いて,音響管法およびEA法による測定の追試を実施する.この結果をもとに,EA法による吸音率を,音響管法による垂直入射吸音率ならびにランダム入射吸音率の近似値である残響室法吸音率と比較し,差異を定量化する. 2. ランダム入射吸音率の算出式の適用範囲の明確化 1.での差異の定量化の結果をもとに,まずは,EA法による吸音特性から統計入射吸音率を算出し,1. と同様に従来法の結果との関係を明らかにし,算出式に関する検討を行う.一つの式で代表できない可能性もあることから,建築材料を局所作用性の材料とそれ以外に分類するなどし,材料の特性に応じた場合分け等を行い,設計者が使いやすいように適用範囲を整理する.さらに,1.以外の材料を用いた,算出式の精度検証も行う.
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