研究課題/領域番号 |
18K04461
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研究機関 | 足利大学 |
研究代表者 |
齋藤 宏昭 足利大学, 工学部, 教授 (20597827)
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研究分担者 |
森 拓郎 広島大学, 工学研究科, 准教授 (00335225)
堀澤 栄 高知工科大学, 環境理工学群, 教授 (20368856)
中嶋 麻起子 神戸大学, 工学研究科, 助教 (40773221)
小椋 大輔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60283868)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 木材 / 劣化 / 耐久性 / 代謝 / 水分 / 予測モデル |
研究実績の概要 |
(1)腐朽材の代謝に関するモデリング 木材の腐朽現象はセルロースやリグニンの分解の際に酸素を消費、水と二酸化炭素を生成するため、細孔中ではこれらのガス濃度が菌の代謝生理に大きく影響する。しかし、これまで提案されてきた木材の腐朽進行予測モデルは、大気中の成分比率での木材小片に対する試験結果から腐朽速度を設定している。そのため、柱脚材等の比較的大きい寸法の部材では、腐朽の進行に伴い材内部のガス濃度比率が変化し、予測結果との乖離が生じる可能性がある。そこで今年度は、腐朽時の材料内の酸素及び二酸化炭素濃度を予測する「代謝モデル」開発のため、腐朽材を入れた密閉容器内のO2 とCO2 の濃度変化を測定し、腐朽菌の代謝によるO2とCO2 ガス生成・消費率の定量を試みた。 成果としては、実験で得られた木材の質量減少量と容器内濃度の関係から、モデルパラメータとなる材料内のガス生成・消費率を求めた。また、代謝によるガスの生成・消費量を質量減少量から推定することの妥当性が確認できた。 (2)柱脚材の腐朽実験による腐朽度及び含水率分布の測定 建築の主要構造材となる寸法の木材では、腐朽した際に菌による代謝や木繊維の異方性の影響が予測される。そこで、100cm2程度の断面寸法を持つ柱脚材に腐朽操作を行い、腐朽度と含水率分布をX線CT画像から定量化する実験に着手した。現時点では、初期の密度分布測定のためのX線CT画像を撮影し、腐朽菌を接種・曝露を開始した段階であり、年度内にデータを収集・解析する予定である。これらの知見を、既往の腐朽予測モデルと組合わせることにより、断面寸法の大きい材の予測精度向上へ繋げる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腐朽材内のガス濃度予測モデルについては、モデルパラメータを得ることができ、計画通りに進んでいる。一方、昨年度から検討している柱脚材の腐朽実験については、培地を利用した再実験に着手したが、菌糸の活性が低く試料への定着が遅れており、再度やり直しになる見込みとなっている。腐朽実験は、試料準備・菌糸の培養で約2ヶ月、その後接種し曝露を開始し少なくとも9ヶ月程度の期間が必要で、さらに開始後数ヶ月を経るまで成功するかわからず、2回のやり直しで6ヶ月以上の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、遅れている柱脚材の腐朽実験に注力すると共に、酸素濃度と腐朽速度の関係を定量化し、代謝機構を加えた腐朽現象の予測モデルとして整理する。柱脚材の腐朽実験の進捗にもよるが、予測モデルの結果を腐朽実験から得られたCT画像の結果によって検証し、腐朽材の代謝や繊維方向等が構造躯体の予測へどの程度影響するか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
X線CT画像の撮影機関の変更、菌糸の活性の影響で腐朽実験が再々試験になったことにより予定が遅れ、関連した実験・解析が年度内に行えず繰越金が生じた。6月中には再実験が開始できる見込みのため、実験の進捗とともに順次使用する予定である。
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