研究課題
本研究の最終目標は、建築の省エネルギー化投資の価値を一般金融商品と比較可能な形で表現することで、不動産の環境性能に関する投資規模を社会全体で最適化し、良質な環境不動産のストックを拡大させることである。このため、エネルギー消費に関連する様々な不確実性の定量的評価を行っている。本年度は建物の運用に起因する不確実性に着目し、これを定量的に評価することを試みた。設備をどのように運用するのかは建物のエネルギー消費に大きな影響を与え、これが不適切な場合にはエネルギー消費は増大する。一方で運用の良否を評価することは困難である。何故ならば建物は一品生産品であるため、それぞれが異なった設備を持ち、内部の人間の活動も異なるためである。従ってエネルギー消費のばらつきのどこまでが運用能力に起因するものなのかは簡単に切り分けられはしない。そこで本研究ではリアリティの高いシミュレーションモデル(エミュレータ)を用いることで、全く同じハードウェア性能を持つ建物を仮想的に構築し、これらを複数の主体で運用することで運用に起因するエネルギー消費のばらつきを評価した。33の運用主体が合計で約340回の年間の建物運用を仮想的に行った。運用の違いのみでエネルギー削減率は最大で30%異なり、平均では6%程度のばらつきがあった。また、優れた運用はエネルギーの削減だけではなく快適性の担保も求められるため、建物内に仮想的に1000人の執務者モデルを設置し、熱的な快適性の変動も同時に評価した。本年度は上記の検討に用いたエミュレータの構築までの研究を国際ジャーナルに投稿して掲載された。
2: おおむね順調に進展している
順調に進行している
次年度は本年度に実施した約340回の仮想的建物運用の成果を整理し、ジャーナルへの投稿を行う予定である。
少額のため、無理に使い切る必要が無いため。
すべて 2019 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
Journal of Building Performance Simulation
巻: Vol.12 Issue 5 ページ: 663-684
10.1080/19401493.2019.1601259
http://www.wccbo.org