研究課題/領域番号 |
18K04465
|
研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
鳥海 吉弘 東京電機大学, 理工学部, 教授 (90649162)
|
研究分担者 |
倉渕 隆 東京理科大学, 工学部建築学科, 教授 (70178094)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 気密性能 / 隙間特性 / 隙間構成 / 戸建住宅 / 改修 / 経年劣化 |
研究実績の概要 |
日本では,中古戸建住宅に適切な改修を施し,次世代に引き継いで行くことは重要な課題である。このストック住宅と新築住宅では,気密性能と断熱性能に著しい差がある。既往研究により,特に気密改修による温熱環境の改善効果が大きく,コスト面でも有用なことが明らかになっている。しかし,従来の相当隙間面積(C値)のみで評価する方法では,改修箇所の特定や改修効果の確認に多くの時間が必要になる。そこで本研究では,隙間特性値と隙間構成の関係から,改修箇所の特定や改修の効果を確認できる手法を提案し,木造戸建住宅の普及に資することを目的としている。 提案する隙間特性式の適合性については,前年度に確認済である。今年度(H30年度)は,前年度使用した2015~2016年に建設された230物件の新築木造戸建住宅の気密測定データを再解析した。工法(構法)は,在来工法(木造軸組工法)が190戸,木枠断熱パネル工法が31戸,ツーバイフォー工法が9戸となっている。在来工法は断熱工法を充填断熱と外張り断熱に分類した。その結果,在来工法(外張)と木枠断熱パネル工法のC値は1.0cm2/m2より小さく,気密性能が高いことがわかった。また,クラック開口比率(小さく奥行きの大きな隙間の占める割合)はいずれの工法もばらつきがあり,工法による違いは見られなかった。 また今年度は,倉敷市と広島市に建設された築後5~10年の3物件と,新築物件2物件の気密測定を行った。なお,経年住宅の新築時における差圧と風量の測定データは保存されていなかった。経年の2物件は,築後5~10年でC値が5~6割増加していた。隙間特性値も増加していることから,住宅の気密性能の劣化は,サッシ隙間の増加が主な原因だと考えられる。窓サッシの気密性能の低下は,ゴムパッキンの経年劣化による,硬化・変形に起因していると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案する隙間特性式の整合性は確認済である。また,竣工後5~10年程度経過したストック戸建住宅の気密性能が5割程度低下することを明らかにし,その原因が窓サッシのパッキンの硬化・変形にあるという予測を立てることができた。ただし,改修効果の確認には,改修前後の気密測定が必要であり,対象物件を見つけることは困難であるため,おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
提案する隙間特性式により,気密改修の効果や気密性能の経年劣化を評価する必要がある。しかし,改修効果の確認には,改修前後の気密測定が必要であり,対象物件を見つけることは困難である。また,ストック物件で新築時の詳細な気密測定データが残っているものは少ない。そのため,広島,岡山のハウスメーカーに加えて,川越市ある気密改修を取り扱う業者と連携し,物件選定を行う予定である。ストック物件の低気密はサッシの低気密に起因することが多いため,それにより隙間特性と隙間構成がどのように変化するのかを明らかにするすることが今後の課題である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
気密測定の実測対象住戸が予定よりも少なくなり,それに付随して物品費,旅費,人件費・謝金が少なくなったため。 次年度も引き続き実測を行うため,差引額は主に旅費,人件費・謝金に充てる。また,国際会議における発表を考えている。
|