研究課題/領域番号 |
18K04466
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
井上 隆 東京理科大学, 理工学部建築学科, 教授 (30151608)
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研究分担者 |
高瀬 幸造 東京理科大学, 理工学部建築学科, 助教 (20739148)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 住宅 / エネルギー / 省エネ行動 / 統計分析 / 世帯構成 |
研究実績の概要 |
今後の住宅分野の省エネルギーを考えるにあたり、急速に進行しつつある少子化・高齢化に伴う世帯構成・社会構造の変化、2020年に迎える省エネルギー基準義務化等、我が国における様々な状況の変化を考慮する必要がある。本研究では、今後の我が国の住宅の省エネルギー方策の提案を目的とし、これまで申請者らが継続的に取得している電力・ガス・水道メーターの10分間隔データ(首都圏の電力・ガス併用住宅および全電化集合住宅の約1,000世帯対象)を利用した各世帯のエネルギー消費用途推計を行うとともに、公的統計の個票データも用いることで、世帯属性ごとのエネルギー消費傾向の詳細な分析・省エネ提案を行っている。本年度の研究成果として、各世帯のエネルギー消費量データ分析用プログラム改良の結果、世帯ごとのエネルギー消費量の集計から省エネ提案内容を示すまでの一連の作業時間を従来より大幅に短縮可能になった。また、調査協力世帯に対して世帯構成員の属性や所有している家電機器等の所有・使用状況に関するアンケートを実施することで、各世帯の毎年のエネルギー消費量の推移と生活実態との相関について検討を行った。その結果、例えば、未就学児童がいる家庭では年ごとにエネルギー消費量が増加していく傾向等が確認された。 さらに、全国の地域や建物・世帯属性を考慮した住宅エネルギー消費実態の把握を行うため、環境省による全国を対象とした公的統計「家庭からの二酸化炭素排出量の推計に係る実態調査 試験調査」の個票データの開示請求を行い、世帯属性に着目したデータ分析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究によって、申請者らが継続的に入手・分析を行っていた実集合住宅のエネルギー消費量データの分析用プログラム改良の結果、世帯ごとのエネルギー消費量の集計から省エネ提案内容を示すまでの一連の作業時間を従来より大幅に短縮可能になった。前年度までにエネルギー消費量分析と省エネ提案を実施していた電力・ガス併用集合住宅に加えて、全電化集合住宅においても、世帯属性のアンケート調査やエネルギー消費量データの分析に基づいた各世帯への省エネ提案の実施を行うことができた。一方で、エネルギー消費量データが継続的に取得できている世帯数に対して、アンケート調査への協力世帯数が少ない傾向にあったため、次年度以降のアンケート回答の負担を減らす等の工夫をして有効回答世帯数を増やすことで、データ分析の精度を向上させる必要がある。また、公的統計データの活用に当たっては、「家庭からの二酸化炭素排出量の推計に係る実態調査 試験調査」(平成26年度版)の個票データを得て分析を行っているが、新たに公開された「家庭部門のCO2排出実態統計調査(家庭CO2統計)」(平成29年度版)については、次年度以降により包括的な分析を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行っている公的統計データ(平成26年度版)の更なる分析を進めるとともに、新たに開示請求が可能となっている公的統計データ(平成29年度版)を入手し、引き続き日本全国における世帯属性等とエネルギー消費量の関係についてより詳細な分析を行う。また、電力・ガス・水道消費量の10分間隔データを取得している実集合住宅を対象としたエネルギーデータ分析や省エネ提案についても継続して行っていき、エネルギー消費量に対する世帯属性の影響度合いを分析する。 これまで省エネ提案を行っていた電力・ガス併用の集合住宅に加えて、平成30年度から全電化集合住宅に対しても省エネ提案を実施し始めたことから、より一般性がある省エネ手法の検討が可能となる予定である。これらの公的統計データと計測している集合住宅で得られているデータとのエネルギー消費傾向の比較についても検討する。 また、世帯属性を考慮した住宅のエネルギーシミュレーションも実施していく。住宅における一次エネルギー消費量算定プログラム、熱負荷・エネルギー計算プログラム等の計算結果の比較を行いつつ、世帯構成・ライフスタイル等を考慮した戸建・集合住宅それぞれの用途別エネルギー消費量の計算法、省エネ提案を検討する。 次年度にも引き続き、公的統計データ分析、実住宅における省エネ提案の他、住宅のエネルギーシミュレーション等を実施することを予定している。特に、省エネ提案を継続的に続けることがエネルギー消費量にどのように影響するかを検証するとともに、少子高齢化に伴い世帯属性が変化していった先の我が国の住宅エネルギー消費量の推計を試みる。 さらに、これらの検討で明らかとなった住宅のエネルギー消費実態について、得られた結果を取りまとめ、日本建築学会大会、空気調和・衛生工学会大会、エネルギー・資源学会、BECC JAPAN等において成果の発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予算で見込んでいた、集合住宅におけるエネルギー消費量データの収集および居住者へのアンケート調査を外部企業に作業委託するにあたって、各集合住宅の管理組合等との調整に時間がかかり、年度内で予算を使いきらないこととなった。翌年度では、得られた研究成果の学会発表や既往研究調査に伴う旅費や、シミュレーション用高速PC、データ収集や居住者へのアンケート調査を実施する際の外部業者への委託費等での使用を計画している。
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