研究課題/領域番号 |
18K04476
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
山脇 博紀 筑波技術大学, 産業技術学部, 教授 (60369311)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療型障害児入所施設 / 小規模グループケア加算 / 加算基準 / 職員配置基準 |
研究実績の概要 |
補助事業1年目は、全国の医療型障害児入所施設178施設を対象とした悉皆アンケート調査を実施し、施設概要、施設空間特性および小規模グループケア加算の取得状況の把握を行う計画としていた。しかし、予備調査にて平成28年4月に大規模な障害児入所施設に対する悉皆調査が実施(厚生労働科学研究事業)されたことがわかり、その調査結果を参考として事例を選出し、訪問調査を行うこととした。訪問事例は医療型障害児入所施設のSn施設、Km施設、Mi施設および福祉型障害児入所施設のAs施設とした。4施設中、Sn施設、Mi施設、As施設は小規模グループケア加算を取得しており、Km施設は小規模ユニットケアを実践しているものの小規模グループケア加算を取得していない。 訪問調査の結果、小規模グループケア加算の取得に際しての現状について、空間的側面およびケア人員的側面に下記のような特性を見出した。 医療型障害児入所施設の3施設はいずれも小規模グループケア加算が障害児入所施設に適応される以前に建設あるいは計画された施設であり、加算基準の人数項目および設備項目の達成が困難であることが共通する。Sn施設は人数項目に合わせて空間分節を再構築し、Mi施設は設備項目を達成するために洗面の一部をミニシンクに改築している。Km施設はともに困難であり、ユニットケアを実践しているにも関わらず加算取得が困難となっている。既存施設における加算取得の困難さの一端が捉えられた。加算基準を念頭において計画されたAs施設との相違点が顕著であった。 また、ケア人員については、専任職員の配置は達成しているものの現行の配置基準(職員比率4.3:1)よりも増員して運営しており、この維持に対して困難であるとの意見が共通して聞かれた。より手厚い職員配置基準による制度的支えの必要性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助事業1年目は、全国の医療型障害児入所施設178施設を対象とした悉皆アンケート調査を実施し、施設概要、施設空間特性および小規模グループケア加算の取得状況の把握を行う計画としていた。しかし、悉皆アンケートの調査項目作成のための予備調査として、日本肢体不自由児協会関係者にヒヤリングを行ったところ、平成28年4月に障害児入所施設に対する大規模な調査項目の悉皆調査がされたことがわかり、本研究における調査項目の再検討を行うこととした。調査項目については、上記既往研究との差別化を念頭に、建築計画の視点に絞った項目作成を行った。一方で、上記既往研究から小規模グループケア加算の取得施設数などの基礎情報を得ることができた。また、医療型障害児入所施設においては、加算取得の7施設の内2施設を訪問し、ヒヤリング調査を行うことができた。 また、加算取得施設であるMi施設のケアスタッフの行動観察調査について、当該施設スタッフとの打合せも終了している。 以上のように、補助事業1年目に予定していた医療型障害児施設の全国悉皆調査を未達成である一方で、取得予定だった情報の一部を得て、また補助事業2年目に予定した加算取得施設の訪問調査の一部を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業2年目である本年度は、まず調査項目を再編した悉皆アンケート調査を実施する。調査は前計画通り郵送自記式とし、アンケート項目は、施設概要、建築概要、病棟構成、病棟内空間構成と共に、小規模グループケア加算の取得状況並びに療養環境加算(追加項目.居室空間面積を基準とする加算)の取得状況とする。これらの情報は既往の研究で捉えられていない為、本研究の独自性となるだけでなく、建築計画研究として有用な知見を得られる基礎データとなり得ると考える。また、このアンケート結果と共に既に行った訪問調査施設からの情報を参考として、小規模グループケア加算取得施設のすべての施設に対して訪問調査を実施する。補助事業1年目の3施設の訪問調査において把握できた、加算取得のための環境改変や取得を困難にしている要件について、全施設の調査結果をまとめると共に、運営としての人員配置について調査し、現行の配置基準との差の有無について把握する。 ここまでの調査から、まず全国悉皆調査結果を基にした論文の作成をおこなう。 補助事業3年目、最終年の平成32年度には、小規模グループケア加算を取得し、施設空間及び運営に特色のある3施設程度を対象に、ケアスタッフに対する行動観察調査をおこなう。本調査は調査員が障害児の生活環境に入ってケアスタッフの行動を記録する方法によって実施予定であるが、特に多動性の障害を有する児童の行動に影響を及ぼすことが懸念されるため、小型のビデオカムによる映像記録を補助的に利用し、調査員の影響を極力低減する工夫をおこなう。助成金は、調査対象施設への訪問調査旅費(旅費の項目)と調査補助者への謝金(人件費の項目)に使用すると共に、論文投稿(その他の項目)に使用する。
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