前年度、MRデバイスを用いたオンサイトでの維持管理情報閲覧支援システムを開発したが、a)MRデバイスHololensのスペックが低く自己位置推定精度の低さや重畳させる情報の表示速度が遅い、b)閲覧機能のみで入力機能がない、c)データベースとの接続ができていない、という問題があった。そこで今年度は、それぞれの問題に対して以下の解決を図った。 a)マイクロソフト社製MRデバイスHololens2を購入し、自己位置推定精度を向上させ情報の表示速度を高速化した。検証の結果、自己位置推定精度については7倍程度向上した。表示速度も体感としてもたつきがなくなった。また、従来は現実空間と3Dモデルの重畳を手動で微調整するシステムとしていたが、深度センサーによるリアルタイム環境メッシュ機能を用いて自動で行えるシステムとした。その他、ハンドトラッキングの自由度が上がったことで、UIをハンドレイを基本とした操作に切り替え開発したところ、操作性が向上した。 b)情報を入力したい部材・機器に、情報パネルが自動で表示される距離よりもさらに接近した際に、情報パネルが入力パネルに自動的に切り替わるシステムとした。情報閲覧と同様、作業をする際には接近して見上げる、という人間の行動特性を取り入れた手法である。入力は基本的にハンドトラッキングで行うが、文字入力は困難であるため、スマートフォンをキー入力デバイスとして併用し、そこで入力された文字がMRシステムに自動入力される仕組みを構築した。 c)既開発システムであるBIMSのデータベースと開発システムを連携させ、BIMSに記録された部材・機器に関する維持管理情報をインターネットを通じて引き出し、現実空間と重畳させる仕組みを構築した。また、オンサイトで入力された情報はデータベースに書き込むことができる。 なお、開発システムの評価や実務への導入が課題としてあげられる。
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