本研究では、景観・市街地環境の保全を意図した絶対高さ制限の評価を目的として、以下の3点について調査分析を実施した。 1)2000年代に導入が増加した絶対高さ型高度地区を対象に、その後の運用状況について、文献資料調査、アンケート・ヒアリング調査を行った。その結果、2010年代に入ると、高度地区の見直す自治体が増加傾向にあり、1)規制強化(制限値の強化や指定範囲の拡大)、2)規制緩和(制限値の緩和や指定範囲の縮小)に大別された。規制強化の背景には、新たに設定された方針への対応や従前の規制が目的達成に不十分だったこと等が確認できた(京都、金沢、世田谷、文京等)。一方、規制緩和の例は少ないものの、規制によって発生する課題に対応するために部分的な緩和を実施する自治体が見られた(京都、横須賀等)。強化にせよ緩和にせよ、都市計画マスタープランもしくは指定方針を策定して、強化・緩和の必要性・合理性を明示している点が特徴的と言える。 2)東京都区部における絶対高さ型高度地区の導入自治体における超高層住宅(20階以上)の立地状況と周辺の用途地域の指定状況等を調査分析し、区画整理による基盤が整っていないエリア、周辺の指定容積率とのギャップが大きいエリア、住居系用途地域が多いエリアにおいては、絶対高さ型高度地区を指定し、住環境の保全が図られていることが明らかとなった。 3)地区計画による高さ制限が地価に与える影響として、東京都区部の2地区を対象にヘドニックアプローチによる分析を行った。主に住居系用途地域(一部商業地域)を対象に絶対高さ制限を実施している地区については地価に正の影響を与えていることがわかった。一方、商業地域や低層住専地域等、複数の用途地域を含む地区については、地区計画の高さ制限による影響よりも、ベースの用途地域の規制が地価に強く反映されていることが明らかとなった。
|