研究課題/領域番号 |
18K04488
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
中城 康彦 明海大学, 不動産学部, 教授 (30286009)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | タイムシェア / 空き家 / 専有部分 / 経営代理人 / 所有 / 利用 / 定期借地権 |
研究実績の概要 |
日本建築学会大会において、ハワイ州のタイムシェアコンドミニアムにおける経営代理人の役割について口頭発表した。分譲マンションにおける空き家問題への対応として、ハワイのタイムシェア制度に注目し、所有者が利用しない期間に特定多数で利用しあうことによってストックの有効活用をする方法の可能性を検討したものである。日本の区分所有法では、分譲住宅の管理について管理組合により自治的に管理する方法を規定するものの、当該管理は共用部分を対象とするものであり、専有部分の管理は所有者の専権事項で管理組合は関与できない。これに対しハワイのタイムシェアでは専有部分の有効活用を経営代理人(plan manager)に依頼し、一元的に管理する方法が成立している。この結果、空き家、もしくは、空き時間について経営代理人によって全体最適が実現される。日本では賃貸や民泊利用が個々の区分所有者に委ねられ、マンション全体の安寧秩序が保持できない問題に対して示唆的である。 経営代理人の制度を実効ならしめるために、行政が条例等を制定して、届出制ほかにより監督する、経営代理人ほかの役割を明確に規定するとともに、それらに対する情報公開によって消費者保護が図られている。 日本不動産学会大会において、日本型CCRCは必要か?どうあるべきか?と題するワークショップを開催し、日本各地でCCRCの実践に取り組み論者5名と討議した。高齢期の居住形態の一つであるCCRCでは居住の権利、取得の対価などについて明示的な指標がない中で、先駆的な取り組み内容が共有できた。 明海大学不動産学部の機関誌の明海フロンティアに、戸建て住宅地の住環境~建築敷地の所有と利用~を投稿した。定期借地権を利用した戸建て住宅地の開発と運営について具体点な事例を分析し、私法と公法の組合せの重要性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超高齢社会、人口減少社会の一方で住宅ストックが増加する状況下では、不可避的に空き家が増加する。空き家を予防し、有効活用するためには、一般的な市場の活性化に加えて、新しい仕組みを導入する必要がある。所有者が利用しない空き時間を集約して市場に提供し、有効活用の需要に結びつける仕組みとして経営代理人(plan manager)の制度は示唆的である。 本件に係る金融の仕組みについては今後の研究で明らかにする必要があるが、税制によりタイムシェア住宅の取得についても一定の優遇策が講じられていることを把握している。
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今後の研究の推進方策 |
取得に多額の資金を有する不動産市場の活性化のためには、円滑な不動産金融が不可欠である。今後は不動産を利用する権利を入手する際の金融に重心をおいて研究を進める予定である。英国ではかつて99年のリースホールドの理論価値はほぼフリーホールド(永久)の価値と同等であることから盛んに採用されたが、残存期間が50年を切るリースホールドの売買において金融機関が融資を渋ることが社会問題化して対応する法制が整備された。日本の定期借地権や中古分譲マンションの取引において金融の仕組みがどのように機能しているか、借家権に対する融資はどのように可能かなどが具体的な分析内容となる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間中、継続利用できると考えていたコンピュータ関連機器(プリンター、スキャナー、コピー、ファックス複合機)が破損し、更新する必要が生じたたことより、物品費が嵩んだため。
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