研究課題/領域番号 |
18K04491
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
志村 秀明 芝浦工業大学, 建築学部, 教授 (10333139)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グローバル化 / まちづくり / ローカル強化 / VINEX / インバウンド / ワークショップ / 多言語化 / 都市デザイン |
研究実績の概要 |
まず、まちづくりに関する研究の海外に向けての発表である。2018年度までに取り組んだ研究成果を3本の研究として英文にまとめて、2つの国際会議で発表した。海外への研究成果の発信に加えて、各国の研究者とまちづくりについて意見交換することができた。関連して、香港城市大学を訪問して二人の教授とまちづくりの国際化について意見交換を行い、また香港における都市デザインの国際化の状況を確認した。我が国のまちづくりについて意見交換するだけではなく、今後の国際ワークショップなどの研究交流について話し合うこともできた。 次に、海外での都市デザインのグローバル化に関する調査研究である。国際化が著しく進んでいるヨーロッパ連合の各国各都市に着目し、2018年度はオランダのアムステルダム、デン・ハーグ、ユトレヒトなどを調査した。調査は、デルフト工科大学研究員と共に行い、グローバル化が進む中でのSpatial Planningにもとづく各都市の状況を把握した。各都市の状況としては、まず歴史的市街地の保全とセットにした駅周辺地区での再開発と高容積建築物の建設があり、第2にVINEXと呼ばれるSpatial Planningの一つで1990年代から進められている環境に配慮したデザインの住宅地などの開発、第3にアムステルダム・アイブルグ地区で行われているようなコミュニティ形成の取り組みを把握することができた。 また、日本でのグローバル化を踏まえたまちづくりの2つの研究に取り組んだ。まず外国人が参加するためのワークショップ手法の開発である。まち歩きを行い、その成果を写真と文章のパネルにまとめる方法と、多言語で表現したパネルに成果をまとめる方法である。それぞれ、東京都中央区月島地区で実践的に行い、一定の成果を挙げることができた。もう一つが、外国人観光客が急増している東京台東区での景観の変化に関する研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まちづくり研究の海外への情報発信と、情報発信を踏まえた研究交流の促進は順調に進んでいる。2018年12月にシンガポールで開催されたGreat Asian Streets Symposiumでは、2本論文の発表を行い、各国の研究者と意見交換を行った。また2019年3月にベトナム・ハノイで開催されたSEATUC Symposiumでは、1本の研究を発表し、各国の研究者と意見交換を行うことができた。 海外での都市デザインのグローバル化に関する調査研究も予定通りである。オランダの各都市における調査から、グローバル化による都市間競争に打ち勝つための駅周辺での再開発と、都市のアイデンティティ強化として歴史地区の保全に取り組む状況を把握することができた。またコミュニティと都市デザインの強化が進んでいる状況も把握できた。グローバル化の進展が、ローカルを強化することにつながり、環境に配慮した住宅地デザインといった取り組みがグローバルでの取り組みを支えている状況を把握することもできた。 日本でのグローバル化を踏まえたまちづくりの実践的研究も予定通りである。芝浦工業大学への留学生と地域住民の協力を得ながら、外国人が参加するまちづくりワークショップの手法を開発している。1本の研究成果を国際会議で発表し、また「留学生と日本人学生、住民の協働によるまちの見どころ多言語化ワークショップ手法の開発」は、2019年度に国内の学会へ査読論文として投稿する予定である。外国人観光客が急増している東京台東区での景観の変化に関する研究では、日本的な景観デザイン形成が急速に進んでいる状況を明らかにすると共に、デザインのオーセンティシティー(真実性)に関する課題が発生していることも明らかにした。この研究「外国人観光客急増地区における景観形成の動向に関する研究」は、2019年度の学会で発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、まちづくりに関する研究の海外に向けての発表では、日本における研究成果を2つの国際会議で発表する予定である。そのうち一つは、グローバル化が特に進んでいるヨーロッパ連合加盟国・オランダで開催される国際会議での発表を予定しており、すでにアブストラクトを投稿済みである。さらに国際的なまちづくりと都市デザインの研究交流を深めていきたいと考えている。 次に、海外での都市デザインのグローバル化に関する調査研究では、やはり国際化が著しく進んでいるヨーロッパ連合諸国で、経済活動が活発なドイツのハンブルクといった主要都市とデンマーク・コペンハーゲンの調査を予定している。どの都市も、開発と歴史的な市街地・景観の保全や再生に意欲的に取り組み、国際的な競争力を高めているとされており、その背景や制度を把握する。 第3に、日本でのグローバル化を踏まえたまちづくりの研究を進める。まず初年度に着手できなかった外国人居住者の状況、地域活動への参画状況を把握する。東京都や中央区・江東区・港区といった特別区、さらにNPOや社会福祉協議会の協力を得て、統計データをもとにして進める。同じく初年度に着手できなかった国内での外国人居住者急増地域の状況を把握する。北海道のニセコ町・倶知安町と東川町、群馬県の大泉町、京都市などを調査対象と考えている。次に2020年東京オリンピック・パラリンピック競技会場や選手村が集中する東京湾岸地域の開発状況を把握し、グローバル化を見据えた地域づくりの方策を検討する。さらに、東京都台東区での外国人観光客急増といったグローバル化による都市デザインの変容に関する研究は、自治体や市民へのヒアリング調査を実施するなどして研究を深化させる。これらの研究成果は、順次学会の大会や査読論文へ投稿していくことで、成果を社会還元していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内での調査が2018年度内に実施できなかった。2019年度に実施することで、調査先自治体と調整を進めている。調査目的は、国内での外国人居住者急増地域の状況を把握することであり、北海道のニセコ町・倶知安町と東川町、群馬県の大泉町、京都市などを調査対象と考えている。
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