2019年度に行った愛知県岡崎市での市民インタビュー調査から,2020年度には,抽出された中心市街地に対する感情をもとに感情表現を整理し,アンケート調査設計をした.愛知県岡崎市と愛媛県高松市在住者を対象に,中心市街地での思い出とそれぞれの年代での中心市街地に対して抱く感情等についてwebアンケート調査を行い,結果を分析した.両市とも,多くの種類の感情の度合いが,年を経るにつれて小さくなっていく傾向が観察された.多重比較法により,年代ごとの感情の度合いの平均の差を検定したところ,岡崎市では,10歳未満・10代と20歳以降・現在との差の平均が有意になる感情が多く,松山市では,現在とそれ以外の年代との差の平均が有意になる感情が多く見られた. 中心市街地での体験の記憶が感情に結びつく傾向に示唆を得て,記憶に着目して,人生の中で一時的に過ごす場所に対する愛着の調査分析を行った.東京理科大学神楽坂キャンパス及び法政大学市ヶ谷キャンパスの卒業生各200人を対象にwebアンケート調査を実施し,キャンパス周辺地域での在学時の記憶や地域愛着について問うた.得られた結果に対して多変量解析を用いて記憶と地域愛着との関係を分析した.まず,因子分析によって,在学時の記憶は「場面」に関わる因子,「行為」に関わる因子,「体感」に関わる因子から成ることが示唆された.次に,共分散構造分析によって,「場面」記憶と「体感」記憶は地域愛着に直接的及び「大学への愛着」を介して間接的に結びつくことが明らかになった.さらに,「場面」記憶は地域愛着の「親近感」因子に,「場面」記憶は地域愛着の「関心」因子により影響が強いという結果が得られた. これらの研究について,論文投稿の準備をしている.
|