研究課題/領域番号 |
18K04495
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
早田 宰 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80264597)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 相互自立住宅プログラム / セルフヘルプグループ(SHGs) / 農村開発(Rural Development) / アメリカ合衆国農務省 (USDA) / 自助ローン / 自助技術支援補助金 |
研究実績の概要 |
米国の相互自立住宅プログラム(Mutual Self-help Housing Program)は、1930年代に制度化され、住み手自らが建設に主体的に参加するグループを公的に支援する仕組である。住宅の自力建設は低所得者が住宅を所有する唯一の方法であるが、低開発国のみならずグローバル化が進む先進国でも近年貧困化を防止するオルタナティブの住宅政策として再注目されている。アメリカにおける相互自立住宅プログラムは、自助のための共助と公助という考え方を政策ミックスさせたユニークな政策である。 本研究は、近年の運用の変化、新しい公共政策の位置づけ、役割が変容、地域社会に与える中長期のインパクトの評価、現代社会における自助住宅の事業モデルのあり方を考察することを目的とする。 本年度(2018年度)の研究では、50年におよぶ制度の運用の実績を踏まえて、アメリカ各地の典型事例を収集し、全体的な傾向、大きな潮流を把握し、今後の調査分析の視点の整理をおこなった。 その結果、①市場活用の変化(機関投資家からの資金調達)、②公共政策の変化(救貧(ケア)から防貧(予防)への転換)、③制度の目標がキャパシティビルディングとしての職業訓練、共同建設ワークによる相互扶助意識の強化、子どものための環境づくり、再貧困化チェーンからの脱出などの複合的な目的の達成をめざす現代的な政策へと進化してきたこと、④州政府やファシリテートするCDCやNPOによって取り組みの考え方、事業期間、政策のゴール設定がかなり多様であること、④特に、家族・友人の果たす役割の変化(コミュニティの相互扶助の低化)、⑤住宅像の変質(連棟型から独立棟型への変化)、⑥コミュニティグループの変化(小規模化・活動短期化)の傾向等について把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進度は予定どおりである。想定していたより多様であり、事例の収集作業に労力を多く割いた。また他国の制度と比較する必要も感じている。それにより分析の視点が整理されたが、一方で現地調査の時間が限られた。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカ各地における相互自助住宅の多様なケースを分析し、類型化をおこなう。視点としては、事業内容(新住宅供給志向かストック改善志向か)と相互扶助の強さ(個別世帯尊重かコレクテイブ重視か)である。 ニューヨーク、カリフォルニア、オレゴン、アラスカ等の地域それぞれで差があり、典型的な事例モデルにおけるケーススタディ、詳細分析をおこなう。 とくにストック改善を志向するオレゴンモデルについて、2000年以後、③事業モデルの変化(新住宅供給からストック改善へ)、④家族・友人の果たす役割の変化(コミュニティの相互扶助の低化)、⑤コミュニティグループの変化(小規模化・活動短期化)の傾向を質的に分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は文献調査に時間を割くことで、現地調査の日程と旅費を抑えることができたため、そのぶんの予算を2年度目(2019年度)に使用執行する。
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