本年が科研費の最終年度となり、アメリカの相互自助住宅の全体像、歴史、制度、思想の関係、さらに推進団体や教育セクターの関与について整理した。自助住宅という住宅建設に居住者自らが関わりトレーニングを受ける最初の取組は、カナダのノバスコシア州におけるジミー・トンプキンス神父らのアンタゴニッシュ運動から生まれ、運動の拠点となったのが聖フランシスコザビエル大学のエクステンションプログラムである。それがアメリカ全土に波及した。1961年アメリカ農民住宅局 (FmHA)が非農村住民も対象を広げ、カリフォルニア州のゴシェンにおける3 家族のプロジェクトが最初の例であった。1963 年に公的融資を導入、1964年に融資資金による土地購入が許可された。建設請負業者のハワード・ウォッシュバーンが補助金を確保し、土地の購入、建設監督のための融資を引き受ける方法を採用した。それまでは社会的正義への宗教的信念から貧困層の救済や住宅提供に関心をもつ人が多かったが、やがて洪水・森林火災など自然・社会・経済的理由による普遍的な被災者の保護に宗教的ではなく哲学的な動機(例えばロールズ正義論など)から関心をもつ層が参加した。またはローコスト建築の普及など技術的動機、さらに社会学的動機、人々が住むのに本当に適切な場所となるコミュニティを構築しそこに住み続けたいと思う人々が自分で物事を行えるようにする、かつ雇用者と非公用者の両方のニーズに応えることを目的とすることによって普遍化し包括的プログラムとしなった。カリフォルニア大学デービス校の開発学プログラム学生らが参加した。これらにより一般化し、アメリカでは共和党、保守党いずれにも受け入れられ継続するプログラムとなった。今後キャパシティ開発とコミュニティ開発の相互作用の視点から比較研究を深めてゆく。
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