研究課題/領域番号 |
18K04497
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
脇坂 圭一 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (70625152)
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研究分担者 |
柳沢 究 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60368561)
大沼 正寛 東北工業大学, ライフデザイン学部, 教授 (40316451)
土屋 和男 常葉大学, 造形学部, 教授 (60333259)
亀井 暁子 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 准教授 (80711754)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 防災建築街区 / 防火建築帯 / 共同ビル / 中心市街地 / ストック活用 |
研究実績の概要 |
本研究では、築後50年以上経過した鉄筋コンクリート造の共同建築である防災建築街区・防火建築帯を対象として、都市の中心市街地に立地するという特徴も考慮しながら、既存活用または建て替えによる更新に向けた検討・提案を行う事を目的としている。 初年度(平成30年度、2018年度)は、主に①既存ストック活用関連施策や再開発関連施策の確認関連施策・方針の整理、②代表者らが活動する静岡県内の都市をはじめとして、防災建築街区・防火建築帯を有する全国の諸都市から調査対象地区の選定を行った。2年目となる平成31年度(令和元年度、2019年度)は、③外部空間の物理的評価として区画割りの変化、建物と道路・歩道の位置関係の分類、④外部・内部空間の物理的評価として設計図書の入手により改修前後の空間構成の変化や可変性への対応の可能性の整理、⑤所有者意識調査として共同建築の抱える課題を所有者アンケートにより整理してきた。 少子化の進展、郊外化の進展だけでは無く、近年のインターネットの発展による購買行動の変化から地方都市の中心市街地は物販店舗経営者らにとって極めて困難な状況にあり、それを乗り越えるための方策を求める声が強いことが、初年度および2年目のヒアリングやアンケートからひしひしと伝わってきている状況である。3年目を迎える本研究であるが、都市の中心市街地において、人々の生活の延長にある建築のあり方として有用な知見が得られるよう調査を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目は、まず、浜松市の田町防火建築帯、田町南・田町南通り・有楽街第一ブロック・鍛治町・旭町防災建築街区、静岡市の呉服町防火建築帯、紺屋町西側・静岡駅前防災建築街区にて、事業者アンケートを行い、建物の更新に関する意向を整理した。建物・設備が老朽化し、耐震性への不安があるものの、一棟に複数の所有者がいることから同意が困難なこと、そのため耐震改修は未実施となっていること、各事業者は個別に改修を行ってバリューアップを図っていること、3,4階に空室が目立つこと、今後の建物利用については共同ビル型での建て替えが多い(未定を除く)ことがわかった。 外部・内部空間の物理的評価として、浜松市の建物を対象としたヒアリングおよび設計図書の分析から、現在まで利活用されている建物は、面積や間取りの変更を受け入れる拡張の余地と融通性が高い平面計画、プランニングの変更に対応する動線計画(階段)、開口部を最大限とした立面計画、以上が特徴であることがわかった。また、対象建物の各区画の用途の変遷を見たとき、長屋型建物ゆえ、整然とした柱割りということも功を奏したのか、店舗、住居、サテライトラボ、倉庫など、各区画とも現在まで利用変更に対応してきている状況がわかった。そうした用途の変化にもかかわらず、防火建築帯・防災建築街区が建設された当時に開発されたアルミサッシを横長連窓として組み込むことで、どのような用途にも対応可能となる許容度の大きさが指摘できる。 「静岡理工科大学建築学科公開シンポジウム静岡建築未来学2019」を企画・開催し、「静岡の〈テリトーリオ〉としての防火建築帯・防災建築街区~浜松、静岡、清水、富士、沼津~」というテーマにて登壇し、高校生、一般を含む多くの来場者に向けて防火建築帯・防災建築街区の今後のあり方について発表した。
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今後の研究の推進方策 |
3年目となる令和2年度(2020年度)は、富士市、熱海市ほか他都市の防火建築帯・防災建築街区における事業者アンケート、外部・内部空間の物理的評価を行うと共に、活用・更新モデルの選定と検討を予定している。活用・更新モデルについて、具体的には、①ストック活用モデルによる計画シミュレーション、②再開発モデルによる計画シミュレーション、③各シミュレーションにおける事業性の検討、④平面・断面からみた空間性の検討、⑤以上のまとめとしての誘導モデルの抽出と事業スキームの提案である。 ただし、昨年度末からのコロナ禍への対応として、ヒアリング調査や現地外部・内部空間調査がどこまで制限されるか現時点では予測不可能な状況であり、国・県・市・所属機関の指針に則って調査を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行しましたが、参画する研究者が複数にわたること、また年度末のコロナ禍への対応として予定していた出張が中止せざるをえない状況もあり、当初の見込額と執行額は異なりました。 最終年度の3年目はコロナ禍への対応が避けられない状況ですが、行政・所属機関等の規程に則って、できる限りの調査・分析を進めていく予定です。
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