研究課題/領域番号 |
18K04498
|
研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
阿部 順子 椙山女学園大学, 生活科学部, 准教授 (50381455)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | マンション / 管理会社 / フランス / 住宅問題 / 持続可能 / ELAN法 |
研究実績の概要 |
H30(2018)年度は、当初の予定ではフランスの大手マンション管理会社や国立住宅情報エージェンシーへのヒアリング調査を予定していた。しかしながら、2018年11月に「住宅・都市整備・情報化に関する法律」(Loi ELAN:Evolution du Logement, de l'Amenagement et du Numerique、以下、ELAN法)が官報に公示され、2019年1月24日から施行されるということを受けて、当初の計画を変更した。つまり、このELAN法はフランスのマンション管理にも少なからず影響を与えることが予見されたので、2018年度は渡仏調査よりもこの法律の理解を優先させた。また、日本のマンション管理の実態についても知見を深めた。 幸い、フランス政府は情報を政府のウェブサイトにまめに掲載するので、ELAN法についても関係省庁や議会が2018年夏頃から理解を助ける資料や文書を開示しており、官報公示後はマスメディア、法律事務所、不動産会社、NPO等が法律の解説をネット上に多くアップしていたため、十分な資料収集ができた。 ELAN法がマンション管理に与えた変更点は、大きくは以下のとおりである:①管理組合総会に関して(議決権の行使の手段の多様化、議決権委任の制限、管理者への委任の制限、省エネ工事のための議決条件の緩和、マンションの登録の義務化)、②管理費に関して(不払いの管理費の時効の短縮化、管理費の納入遅れへの対応の厳格化、集団暖房の暖房費の明細の作成のためのメーター設置義務化)、③管理者(プロ・ノンプロ)について(就任できない役割の明確化、議事録の送付期限の短縮、所定の情報開示の遅れに対する罰金の設定、所定の情報の電子化とアクセスの保証の義務化)、④共有部分の定義の精密化 上記の知見は、日本建築学会2019年度大会学術講演(9月5日)で口頭発表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書作成時点では全貌がよくわからなかったELAN法という住宅に関する新しい法律の登場(2018年11月)によって、当初の計画を変更した。初年度予定していた渡仏調査を次年度以降に移すという点で、進行に遅れがあるともみえるが、法律の影響を反映した方が知見の精度があがり、研究成果としては間違いなくよいと確信している。今後もELAN法のマンション管理の現場への影響を勘案しながら、必要があれば当初計画を柔軟に変更しながら、より大きな成果を目指したい。
|
今後の研究の推進方策 |
ELAN法は2020年6月には、マンションの規模・性格によって異なる法的体制を与えるなど、今後調整が予定されている。政府のウェブサイトやメディア等に公開される情報を観測しながら、本研究の目的である、フランスのプロのマンション管理者の機能と限界を明らかにするために、最適な渡仏調査のタイミングを計ろうと考えている。また、2018年度に計上していた渡仏調査用の旅費を使用しなかったため、今後、研究協力者の渡仏調査同行のための旅費に充当できる可能性も出てきた。いずれにせよ、もっとも効率がよく効果的な渡仏調査を行うために、柔軟に計画を見直し、より大きな研究成果を得られるよう努力する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に当初計画していた渡仏調査を実施しなかったため、その旅費分が次年度使用額になった。2019年度も渡仏調査を計画していたため、年度内に2回調査を実施するか、最適な研究協力者の同行を考えるか、次年度以降の旅費に充当するか、適宜判断したい。本研究に大きな影響を及ぼすELAN法という住宅新法の調整期間が2020年6月までとされているため、その動向を勘案しながら、最適な渡仏調査を考えなければならない。
|