非被災地では、事前復興の観点と立地適正化計画をつなげる必要があるが、一刻も早い復興を目的に、立地適正化計画に手が付けられない現実がある。本研究は、立地適正化計画と事前復興とをつなげる必要性と有効性を明らかにするものである。まず被災地における立地適正化計画策定の可能性を、宮古・大船渡・石巻を対象に調査し、策定はせずとも実質的にそれに近い復興まちづくり計画が存在していることを示した。一方で愛知県・三重県は、地震の予測はあるものの、誘導区域の設定が危険性と向き合わずに立地策定か計画が策定されていることが明確になった。 2年目はポートランド市調査で、集約ではなく農村部との共存を目指し、公共交通を有機的に関連させた立地適正化計画の目標像が明確になった。一方で静岡・蒲郡・和歌山・高松の調査では、現状の都市構造を踏襲した計画となるために、誘導区域を津波危険区域に設定せざるを得ない事例が多く、事前復興的からは大きな課題が明らかになった。さらに公共交通網計画については、交通過疎地の生活を成立させる日野町、徒歩を中心にした見附市の公共交通、商業機能との連携を想定する鶴岡市の事例を明らかにした。 本来はポートランドの公共交通施策の調査予定であったが、コロナ禍のために東北6県全ての立地適正化計画の策定状況調査をアンケートとリモート議論で実施し、宮古・大船渡・気仙沼には現地調査を実施し、立地適正化計画策定の動きにもつながっている。高知・和歌山・三重の先進的な事前復興の取り組みと立地適正化計画策定状況の調査を令和3~5年度で実施し、行政担当者との議論を重ね、避難タワーの設置等により危険と向き合いながら持続可能性を目指す考え方を明らかにすることができた。 さらに昨年度は、大雨被害により地域の持続可能性に大きな問題のある九州地方の調査も行い、津波だけではない事前復興の必要性を明らかにすることが出来た。
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