今年度は、空間再編と地域創造圏の動的生成プロセスの解明に関して、各分析の知見と研究成果をまとめるための活動を実施した。 具体的には、上記プロセス解明を行うための詳細な分析対象地域として、富山県高岡市、岐阜県中津川市、宮城県石巻市、広島県尾道市に絞り、2010年以降の10年間と、コロナ禍以降の4年間の間に開設された場所・店舗、活用された空き地・空き家、市民や事業者、非営利組織など、各活動主体による活動とイベント等のプログラムを再整理し、上記プロセスにおける相互の関係の分析をまとめた。また、各地域の空間再編と地域創造圏の生成プロセスにおいて結節点となっている場所・プロジェクトを抽出し、運営者と利用者のライフシフトと各プロジェクト生成過程との関係、各地域毎の当該プロジェクトに至るまでのプロセスと、当該プロジェクト以降の周辺への波及のプロセスの双方を分析した。 上記分析により得られた知見として、以下の二点が挙げられる。一点目は、地域内の公共空間・低未利用ストックの活用をめぐる動きと、市民・事業者等により活用されている個々の場所、活動の補完関係が、コロナ禍以降、顕著に見られたことである。屋外空間やシェア空間を利用したプログラムと、各場所の一定のルールを持った開放性やコミュニケーションに対するニーズの高まりなどがこうした関係を後押ししたことが明らかになった。 二点目は、各地域それぞれに近隣スケール、中心市街地・歴史的市街地の地区スケール、周辺地域を含む広域スケールの重層的なネットワークが、中心市街地・歴史的市街地の特定エリアの空間再編に影響を及ぼす一方で、創造的活動の範囲は広域スケールの中で相互に影響しながら一定の圏域に広がりながら、構築されていくことなどが明らかになった。
|