本研究は、都市計画は必要であるとの立場から、それを再定義し、具体的システムを提起し、それが有効であることと、より有効となるための課題を研究的に吟味することを目的とする。半世紀前にできた都市計画法の条文が接ぎ木の積み重ねによってきわめて不自然かつ複雑になり、結果として「都市計画とはいったい何なのか」がわからなくなっているばかりでなく、「都市計画」は次第に小さな領域になりつつあるととらえ、これらの問題を解消する新たな都市計画法体系を提起するための研究課題群を設定している。 最終年度の令和2年度は、必須部分の補強と全体構成を整えることに専念した。まず、本研究の主要概念である「新たな公共観」の変遷につき考察し、その成果は日本都市計画学会編『都市計画の構造転換』(2021.3)にも組み込まれた。さらに、「新しい公共観・公共ニーズを踏まえた都市計画法とは」を原点にさかのぼって考察した。後者が第1章、前者を第2章となり研究の基盤がしっかり据えられた。さらに第3章をマスタープランの刷新、第4章を計画許可システムへの進化として、この両者が新しい都市計画法の主要部分をなすように構造づけをした。現行のマスタープランのあいまい性を脱却して明確な政策の束に近づけることで、維持管理型の新しい公共ニーズに対応する。そうした政策から遊離している用途地域(地域地区)は、用途地域外の土地利用計画と合わせて柔軟化する。そのためには国が13地域に定めている用途地域を分権化することとセットである。第5章では都市計画関連法と都市計画法の関係の分析(令和元年度)を踏まえて、都市計画法がプラットフォームとなり政策化されたマスタープランを介して広義のまちづくりにつながる法体系の姿を明確にした。「新たな公共観」にもとづき刷新された都市計画法の目的等も起草した。第6章で新しい都市計画法の構成を具体的に示した。
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