令和3年度は、前半はコロナ禍のために三重県外の現地調査を実施することが困難であったが、後半は一時的に状況が改善されたために、前年度に実施できなかった東北の被災地の震災復興地区の現地調査を実施し、復興事業の現状と課題について把握した。また三重県内の市町を対象にして、南海トラフ地震に備えて市町がリストアップしている応急仮設住宅の建設候補地の充足度(必要戸数を建設するための必要用地面積に対する建設候補地の総面積)を推計して、木造仮設を災害公営住宅等として長期利用できる建設地の準備状況について評価した。以上の分析を踏まえて、前年度までの研究成果を振り返って総括することに重点的に取り組んだ。主な研究成果は、以下の通りである。 第一に、木造仮設の利点と長期利用(再利用)に向けての関連制度上の留意点として、恒久的な建築物と応急的な建築物では制度上の位置付けが異なっていることが挙げられ、両者の主な違いは、供与の基準と建築基準に対する制限緩和(適用除外)に関することであること。 第二に、木造仮設を長期利用する事例として、災害公営住宅として位置付けた福島県会津市の県営城北団地、市営単独住宅として位置付けた熊本県宇土市の境団地を対象にして、長期利用に至る経緯、復興住宅としての利用する上での技術的な留意点、両者の比較分析を通じた今後の長期利用への示唆等について分析したこと。 第三に、震災復興対応型木造住宅計画の基本フレームとして、住宅の位置付け、用地計画、住宅計画、住棟計画、共同施設計画等について内容を精査するとともに、新たな課題として復興後に整備された住宅地がコンパクト・プラス・ネットワーク型都市に関する計画との整合性が必要であることを考察したこと。 第四に、以上を踏まえて、従来の住まいの不連続な復興と今後の連続復興の基本コンセプトをとりまとめたこと。
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