研究課題/領域番号 |
18K04510
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
木川 剛志 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (50434478)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中心市街地 / ドキュメンタリー / 記憶の中の都市 / 直接経験 |
研究実績の概要 |
本研究では、地方都市の中心街が、効率上の優位性、商業上の集客力がかつてよりも失われたにも関わらず、なぜ今でも中心街として住民に認知され、行政もそれに基づいた政策を遂行するのか、その理解のためにスペース・シンタックスといった都市解析手法に加えて、社会学的、映像学的視点を用いて住民に内在する都市像の抽出を試みている。 この研究のため、今年度は戦前、戦後を通じて社会変化によって大きく都市空間が変容した軍港や商業港を中心とした地方都市を事例としてスペース・シンタックスを用いて分析した。今年度は横須賀、宮津、室蘭、浦賀、小樽を事例として、数値分析と比較を行い、スペース・シンタックスの国際会議に投稿、査読を経て採択された。この論文では規模の異なる都市の分析のためにはスペース・シンタックスの分析手法の用語ではあるがRadius=5が有効であることを示し、副産物的な成果として査読者と学会における質疑応答では評価された。 また、名字が木川だという縁だけではあるが、横須賀市で1947年に生まれ、当時の言葉でいう混血児だったために1953年に養子縁組で渡米した女性と知り合い、彼女の肉親捜し、故郷捜しを手伝った。クラウドファンディングを活用して、彼女の帰国を実現し、66年ぶりの故郷を歩いてもらい、思い出の中の風景がどのように彼女の中で記憶され、それが実際の風景と比較してどうであったか、インタビューを行った。これについては大韓民国で開催された学会において招待講演として発表した。また、この帰国はテレビ局に取材され、当初は情報番組の一コーナーとして放送され、のちにテレメンタリーで特集され全国放送された。 この研究はインタビューに帰国の模様、さらに現地の調査を加えてドキュメンタリー映画に仕上げる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにスペース・シンタックスを用いた分析は、横須賀、宮津、室蘭、浦賀・久里浜、小樽まで終了している。これに加えて、長崎、佐世保の現地調査もすでに終えている。横須賀に関しては概要にも書いたように、帰国された方以外にも多くのインタビューを行っているので、記憶の中の空間像についてのデータは蓄積されている。今年度の3月に行う予定であった調査は3月以降のコロナ禍によって延期となっているので現地調査以外の都市図からの分析を進めるためにいくつかの事例を準備している。 また、横須賀市に関しては、数値データによる分析以外にも都市史の視点からも研究を進められるだけのデータが集まっているので、都市史学の論文に投稿予定である。 よって、一部において研究進捗が芳しくない部分があるが、その一方で現地調査に寄らない研究を進めているので、おおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
概要、進捗に述べたことと重なる部分があるが、港町をスペース・シンタックスで分析した研究についてはまとまりつつあり、夏までに論文として投稿予定である。また、インタビューを含めた研究成果をまとめたドキュメンタリーについても、追加撮影も考慮にいれつつではあるがまとまりつつある。そして、空間変容についての都市史からの論文も9月に投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月以降のコロナ禍のため、予定していた出張の遂行ができなかったため、次年度使用額が生じた。これに関してはコロナ終息後に改めて調査する。
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