本研究では、地方都市の空間において住民の記憶と想像がどのようにその変容に影響を与えてきたのか、を地域の歴史の掘り起こしによって分析してきた。スペース・シンタックスによる空間分析に加えて、社会学的、映像学的な視点を用いて住民に内在する都市像の抽出を試みている。 最終年度は、主として著書の分担執筆、また研究会における発表、映画祭への応募、それにともなうディスカッションを行った。前年度に行った、戦後間もない頃に、横須賀に混血児として生まれ、アメリカに養子縁組でわたった女性の母親探しの調査は、現地の住民へのインタビューなどを伴い、一連の研究として分析し、「戦後期横須賀における米軍属と地域住民」として分担執筆した著書にて発表した。この論文の中では、いわば負の歴史と考えられる戦後の外国人相手の歓楽施設の配置や、外国人と同居する女性たちの居住状態を調査し、その背景を調査し、まとめている。この調査自体は住民の記憶に委ねられている部分が多く、根拠が薄くとも、記述しなければこの先、検証が不可能なことであること、その議論も同論文の中で検討している。また、この調査をまとめた映像は、映画「Yokosuka1953」として仕上げて、その中編版を世界の映画祭へ応募した。その結果、最優秀グランプリ映画賞を含む受賞を受けている。2021年度以降に長編映画として完成させ、広く公開予定である。 映画に関しては、地元住民に向けた上映会なども企画していたが、それはコロナの影響を多大に受けて、研究期間には行うことができなかったが、今後、自費にて開催予定である。
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