わが国の公共調達においては、会計法令等を前提に、入札契約制度の適切な運用が求められるが、過去の談合摘発やダンピングによる工事の粗漏や下請へのしわ寄せ等の問題に対処した制度改革が進められてきた。本研究は、その一端を担う「中央建設業審議会建議(平成5年)」で、発注者毎に設置が義務づけられた「入札監視委員会」の機能強化を学術的観点から提案したものである。 得られた成果としては、まず公表されている入札監視委員会の議事録を収集し、テキストマイニングによって、対象期間の審議内容の傾向を把握した。事例として、特定の発注者の入札制度改革が入札結果に与えた影響の継続的観察と入札監視委員会の議事録のテキストマイニングの結果について分析し、そこに一定の関係を認めた。 また、入札監視委員会の議事録、建設市場における競争状態、入札契約関連の法令整備の経緯をトレースすることによって、入札監視委員会の主たるミッションが、設置当初喫緊の課題であった談合の察知から、徐々に、公共調達システム全体、地域の安心・安全を担う建設産業全体のあり方にまで拡大したことがわかった。地方公共団体の発注者と入札監視委員会、応札者は、競争状況や公共調達のミッションの変化に対応するための知見、政策、戦略の蓄積に乏しく、苦慮している状況も読み取れた。 また、この問題領域における欧米での動向を捕捉して、公共調達の評価は、入札結果の改善に限定するのではなく、すでに公共調達システム全体に対するPDCAに関心が移っていることを示す事例が得られた。 本研究の結論として、わが国の発注者毎に個別分散する入札監視委員会の内容の提案、強化に加え、発注者から独立して入札結果を網羅的に収集、分析して様々な提言を発する横断的研究センターの必要とそのあり方について提案した。
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