研究課題/領域番号 |
18K04518
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
小笠原 正豊 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (00750390)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 設計者 / 建築家 / アーキテクト / 分業 / エンジニア / 分業 / 設計プロセス / 仕様 |
研究実績の概要 |
R1年度9月に北欧フィンランド・デンマーク・スウェーデンを訪れ、合計10団体に対してヒアリングを行った。BIM先進国である北欧において、設計者がどのようにツールを使いつつ分業しているかについて確認した。同時に、設計情報の共有のためにどのような仕様の標準化に基づいているのか実務者・学識者にヒアリングを行い、BIMやICTを念頭に置いたCoClassは必ずしも建設業全体に浸透している状況ではないことを確認した。また11月に英国を訪れ、合計10団体に対してヒアリングを行った。英国に特有なQSにヒアリングを行い、単なる積算コンサルタント以上のプロジェクトをマネジメントする役割や責任を持ち設計分業に加担している実情を確認した。BIMは日本よりも浸透しているものの、既存の分業体制の中で情報共有ツールとして必ずしも効率的に使われていない状況を確認した。 帰国後ヒアリングを取りまとめ、東京大学生産技術研究所RC90研究会等で報告会を行った。また東京電機大学と中原大学とのジョイントフォーラムにおいて“Seeking an "ideal" task distribution of BIM based design process”とした基調講演を行った。 昨年度の調査内容としてR2年度には、日本建築家協会発行の『Bulletin』に寄稿を予定している。また今までの調査を踏まえつつ、学会梗概での発表2本、および査読論文2本の執筆を予定している。 本研究は「設計者」の役割・責任の分担が進展している背景及び分業構造の実態を把握し、その分業が進行するメカニズムの解明を試みることを目的としているが、本研究のR1年度の研究実績は、北欧と英国における分業構造の実態把握を進めたこと、BIMツールの採用と仕様の標準化を通じて建築生産のプロセスが変化し、設計者の職域や分業体制に影響を与えるという仮説を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R1年度は北欧・英国における調査を遂行し、多様な専門家から多方面の知見を得ることができた。特に英国では日本や米国と異なる専門職による分業を確認した。同時に、ICT・BIM化によってプレファブリケーションが進み、設計と施工の垣根が低くなりつつある現状を確認した。北欧では、米国や英国とは異なるCoClassにて仕様情報記述のための標準化を行っていることを確認した。これらの調査内容は、R2年度に予定している学会発表と査読論文として整理を進めている。調査の実施状況、論文等での発表状況共におおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
3年目のR2年度は、もともと国際学会に参加し調査内容について発表する予定だったが、COVID-19の影響で開催自体が危ぶまれている。また2年前に米国東部を対象とした調査できたものの、米国南部や西海岸では調査ができていない。またアーキテクトやエンジニアといった専門職を中心として建築設計を進める手法は、英米からアジア諸国へと輸出されていったが、どのように現地の分業体制に反映されているかまでは調査ができていない。以上より、今後、米国南部西海岸およびアジア諸国への追加ヒアリングを考えているが、海外渡航の自粛が続いた場合は、文献を主とした調査に切り替える予定である。国際情勢を見極めながら都度判断していきたい。 設計者間の分業に対して、設計者にのみ視点を当てるのではなく、建築生産に対してどのような設計情報が必要とされ、そのためにはどのような職能および分業が必要になるのかという視点で本年度の研究を引き続き遂行する。各研究は、査読論文として整理を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費・人件費とも、過去2年間を通じて予定よりも使用しなかったため次年度使用額が生じた。3年間で平準化して使用する予定である。
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