R4年度はコロナ禍の影響もやや収束しつつある中、英国を訪問した。調査において、4社の設計事務所の設計者、および、英国の設計事務所に勤務する日本人設計者3名に、具体的な実務を通じてどのように分業が行われているか、文献調査だけではなかなか確認できないプロジェクトの運用状況などについてヒアリングを行うことができた。 また設計者による業務全般に関する調査を反映し、建築生産(松村秀一・権藤智之編著、市ヶ谷出版社)第3版において、設計と監理の章を執筆した。 R3年9月より日本建築学会建築社会システム本委員会建築生産小委員会の主査として、生産シンポジウムや建築セミナーの企画立案および実施に関わっているが、特にR4年度の「設計と施工の協働をさぐる」というタイトルの建築生産セミナーにおいては、4名の発表を通じて、設計者や施工者の役割が変化しつつある中、設計者と施工者の分業がどのように実現しているか情報共有することができた。 R3年より参加しているアーキテクト/ビルダー(「建築の設計と生産」)研究会(コーディネーター:布野修司+安藤正雄+斉藤公男)では、「これからを担う若手建築家の活動と実践」や「建築家として生きるー職業としての建築家の社会学」といった企画にて、コメンテーターとして参加し、調査結果を前提にコメントを行った。 本研究は「設計者」の役割・責任の分担が進展している背景及び分業構造の実態を把握し、その分業が進行するメカニズムの解明を試みることを目的としている。米国と英国という20世紀初頭から建築設計分野をけん引してきた両国における設計者間における分業の状況はある程度調査でき、R4年度において、それらを建築生産の教科書、日本建築学会主催のセミナー等で発表することができた。
|