研究実績の概要 |
2018年度は東北関東中部の神社(DB42,520件)から無作為抽出した4469件にアンケート調査を実施し有効回答932件・21%を得た。2019年度は、北海道・近畿から九州の神社(DB31,733件)から抽出した3,571件にアンケート調査を実施し有効回答682件・20%を得、「神社社殿(本殿拝殿)の構法と維持保全の実態」他を発表した。ところが、全国の寺院本堂のアンケート調査と比較して、管理者を特定できない神社の返戻郵便が想定以上に多く、また、宮司や氏子が建物の建立年や建築的な質問に回答できないケースも多いことから、アンケートの信頼性を補完する為の現地調査や文献調査の重要性を認識した。ところがコロナ禍でもあり、2020年度はアンケート結果と東京都の神社の文献調査の照合に留めた。研究は「神社建築の構法の変遷と地域性~全国の神社のアンケート調査と東京都の神社の文献調査等~」他を発表した。 前述のように、現地調査がより重要となった。そこで、アンケートを回収した北海道から九州の神社を可能な範囲で実際に訪れ、2021年度は中国・九州・近畿・東北、令和4年度は関東・中部・北陸の社殿を調査し多くの情報を得た一方で、覆殿(覆屋)により本殿を目視確認できない神社も多くあり、神社や本殿の正確な情報を得ることには限界もあった。一方、昨今の大規模震災等で地域の歴史的建物が被害を受け、価値が認識されないまま失われる未指定文化財もあり、文化庁では2019年文化財保護法を改正にて地域で保存する建物を市町村の文化財保存活用地域計画に位置づけることとした。そこで、2023年度は、30年前に実施された神奈川県の近世の社寺建築の文献に記載された(神社本殿と寺院本堂)を対象に、アンケート調査と現地調査を実施し、自治体への調査も実施した。「神奈川県の神社建築における国登録有形文化財の潜在性と課題」、他を発表した。
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