研究課題/領域番号 |
18K04522
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研究機関 | 富山国際大学 |
研究代表者 |
浦山 隆一 富山国際大学, 現代社会学部, 客員教授 (10460338)
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研究分担者 |
石井 龍太 城西大学, 経営学部, 准教授 (00712655)
鎌田 誠史 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (70512557)
山元 貴継 中部大学, 人文学部, 准教授 (90387639)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非・格子状空間配置 / 沖縄先島諸島 / 空間変容過程 / 中世相当期・近世紀 / 伝統的祭祀施設 / 囲壁集落 / 地籍図調査 / 考古発掘調査 |
研究実績の概要 |
中世相当期から近・現代までを俯瞰した「琉球における村落空間の形成過程」の解明、さらに本研究である非「格子状」集落の立地条件や近世住居移動の場所的原則を探求するために、以下の課題に取り組んだ。 ①4月27日~5月6日:分担者・石井が中心となり、宮古島狩俣集落の聖地のひとつである「ザー屋」において床土間部分の発掘調査を実施した。12月26日~30日:宮古島狩俣集落の「北の石門」の測量調査を実施した。②12月25日~29日:分担者・鎌田が石垣市の竹富町役場にて、「八重山明治期地籍図資料調査」を行い、明治期35年製作の地籍図の撮影を実施した。併せて石垣島平得村、宮良村のフルストバル遺跡などを現地調査した。③5月24日~31日:浦山が沖縄本島・勝連南風原集落の「元島(モトジマ)」の現地再調査を行うとともにうるま市教育委員会にて『南風原損文書』と「地籍図一式」を入手した。④7月19日~23日:浦山が狩俣集落の祭祀施設「天道(ティンダウ)」に関連した、対馬の天道信仰施設の類似石積みの調査を比較研究の目的で行った。⑤8月3日~10日(台風のため中断・変更):奄美諸島全域を対象とする集落調査は沖永良部島の集落踏査のみに切り替え、武庫川女子大にて「奄美諸島の集落空間の構造的特性」について鎌田から分析報告を受けた。⑥3月14日~7日:分担者・山元は鹿児島にて「麓」集落の現地調査と明治期の地籍図収集と土地台帳(3000筆分)のデーターを入手した。その目的は琉球の計画的村落の構造や「地割」とのルーツとこ関連が考えられるためである。⑥10月20日~26日:浦山は沖縄本島南部集落で地方の集落グスクと近接する非「格子状」集落、南城市玉城の百名・仲村渠調査を行った。その間に沖縄県立図書館にて、狩俣・西原・南風原集落の関連資料も収集した。 研究連絡会は5月25日(琉球大学)、8月28日(中部大学)、1月25日(中部大学)にて開催された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研費研究結果で出版された『「抱護」と沖縄の村落空間』(風響社)が5月に店頭に並んだ。本著は沖縄タイムスで<「蔡温の知」と「フクギの情」が語る琉球の「抱護」>、琉球新報で<琉球の集落 分野超えて迫る>として読書欄に書評が紹介された。 分担者・鎌田は出版に関連して『生活環境学研究7号』に「抱護と沖縄の村落空間」の論説・報告を寄稿した。また沖縄・久米国鼎会の公開文化講座において、同標題の招待講演も行った。分担者・山元は非・格子状村落の古形を求める研究に着手し、人文地理学会において「沖縄本島・勝連南風原集落と元島(モトジマ)」を発表。また沖縄県立美術館・博物館主催のシンポジウム「形から見たグスクの原点を探る」で「朝鮮半島における邑城(ウプソン)について」(招待講演)を発表し、沖縄のグスク研究に新たな視点を導入した。さらに日本地理学会では「島津藩周辺地域における「麓」集落の構造と近・現代における変容」を取り上げた。 現地実測発掘調査・文献及び資料収集調査としては、①宮古島狩俣集落の「ザー」において宮古島北部地域では初めての例となる13世紀代の外耳土器が出土した。また16~17世紀代に斜面を整地したことが確認され、ザーの成立は近世琉球期以降であろうと推察される調査の結果を得た。②宮古島狩俣集落の「北の石門」の測量調査を実施。極めて貴重な史跡だが、屋根が落下し崩壊の危険にあるため、現状の記録を取っておくことが急務となった。測量により、門の南側の石壁はほぼ無傷であるものの、北側の特に東面の崩壊が著しいことが確認された。③地籍図資料収集調査は竹富島役場で行われ、明治35年作製の旧竹富町の地籍資料(約260枚)を撮影することができた。④浦山は対馬の天道信仰施設調査を通して 海岸墓地・「ヤボサ」・「天道シゲ」の場所的考察を行った。この比較研究は琉球の聖域(御嶽)を取り上げる為の重要な視野と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究である沖縄の集落研究における非「格子状」形態の問題は、近世計画的「格子状」集落形態を前提・対比事項とした問題意識である。「格子状」は研究者によって、「碁盤目型」「井然型」とも呼ばれる。今年度は、この形態分類について再考する。そのために近年の考古学資料と知見を踏まえつつ、基本文献資料を再読・精査する。田村浩『琉球共産村落の研究、(1927)』、鳥越憲三郎『琉球古代社会の研究(1944)』、仲松弥秀『神と村(1961)』『古層の村(1978)』、稲村賢敷『沖縄の古代部落マキョの研究(1968)』、田里友哲『論集 沖縄の集落研究(1980)』&坂本磐雄『沖縄の集落景観(1989)』、高橋誠一『琉球の都市と村落(2003)』以上の文献等から、分類の指標と考えられる項目を抽出し、その分類の妥当性について論じたい。特に仲松弥秀のフェールド・ノート『琉球弧も村落探求1~20』の内容分析を行いたい。 宮古島狩俣集落のフィールド調査を再開する前に、自治会の要請により9月以降で自治会主催の発掘調査報告会を持つ。その後、「ザー」に関連した山頂部の祭祀施設石積み「天道」と周辺の実測調査を行う。また昨年に引き続き12月には「北の石門」基礎部の発掘調査を実施する。 今年が研究最終年度であるため、第3回学際シンポジュウム「(仮称)生き続ける琉球の村落」を11月28日(土)に沖縄県立美術館博物館にて開催する。内容は現在進行中の合同科研(科研B:1件、科研C:3件)の報告会である。発表者は鎌田誠史・石井龍太・山元貴継・山本正昭・澁谷鎮明。総合司会は浦山隆一を予定している。 研究連絡会はコロナ禍の影響のため、オンライン研究会を、5・7・9・11・1・3月に行い、影響が収束次第、対面型研究会を各大学に集まる形とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の使用計画としては、基本文献の解読作業に重点を置くため『南島諸島資料集(全5巻)』の購入に10万円を充てる。また、整理に伴う機材としてパソコン1台(14万円)を整備する。継続調査として、狩俣集落関連である9月と12月(旅費・滞在費×2名)に40万円。11月の沖縄。那覇でのシンポジュウム(旅費・滞在費×3名)に20万円、シンポ関連諸費(小冊子作製費を含む)として10万円。研究連絡会出張費(2回分)は6万円とする。その他、狩俣自治会協力費・集落センター使用料(1年間分)3万円、研究協力者謝礼品代2万円、消耗品代として3万円を予定している。
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