研究課題/領域番号 |
18K04524
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山田 悟史 立命館大学, 理工学部, 講師 (00551524)
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研究分担者 |
小峯 力 中央大学, 理工学部, 教授 (60382826)
江川 香奈 東京電機大学, 情報環境学部, 助教 (10648603)
岩田 伸一郎 日本大学, 生産工学部, 教授 (30314230)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | AED / 救命率 / 非医療従事者 / 設置状況 / 被圏域人口 / Multi-Agent-Simulation / 伏見稲荷大社 |
研究実績の概要 |
非医療従事者による救急医療環境の充実には,現状及び計画の評価検証が必要であるが手法が十分ではない。そこで過年度から引き続き突発的な心肺停止状態の要救助者が発生した際の非医療従事者の一次救命行為による救命率をMulti Agent Simulationを用いて確率現象として評価する手法の構築に取り組んだ。評価手法については新たな内容にも着手した。一つ目は施設管理者のAEDに対する認識の把握である。二つ目はAEDを指定時間内に利用可能な範囲とその範囲に含まれる人口の把握である。 継続して取り組んできた伏見稲荷大社を対象とした現状及び計画のシミュレーションは方法と結果を精査して歴史都市防災研究論文集に発表した。これにより「滞在人数」・「経路選択」・「一次救命行動」・「First Responder 存在割合」・「AEDとサインの配置」を変数に持つMulti-Agent Simulationを用いた評価・計画手法を社会的に共有した。この手法に関する成果は他地域に応用可能である。そのため非医療従者の一次救命を想定したAED・サインの定量的な配置計画手法の構築に向けた意義深い成果と言える。また手法構築という成果だけでなく,「滞在人数」・「存在割合」・「AEDとサインの配置」と「救命率」の関係性を明らかにし,非医療従事者による救助という想定に対応した「AEDとサイン」の増設効果も明示した。これにより具体的で有効な対象地に関する知見も共有した。 上記の施設スケールを対象としたシミュレーションに加え,都市スケールでの評価・計画手法にも着手した。まず実際にAEDを保有している施設管理者に対して設置・運用状況の調査を行った。次にAEDを有効時間以内に利用可能な圏域と圏域内の人口の明示にも取り組んだ。このような成果は都市スケールの計画前提となる現状把握の資料として有効であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に示したように当初計画していたMulti-Agent-Simulationを用いた非医療従事者による救急医療環境の評価・計画手法の構築について成果を得た。その成果の手法と結果の精査を行い,研究対象地の歴史都市を主テーマに扱う査読付き論文誌に発表した。また都市スケールを対象とした現状評価にも着手し成果を得た。これらのことから研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で地域に限らず応用可能な手法を提示した。これに加えAED設置のガイドラインにつながるような一般的な解釈が可能な知見を得ることを今後の課題とする。 この課題においては,健康志向高まる現代において愛好者が増加するランニングを取り上げ研究を実行する。研究目的は健康的な距離とされる5キロの経路の救急医療環境を計画する際のAEDとFirst Responder育成のガイドラインの提示である。既存のガイドラインは設備要因の目安になっている。本来は人的要因と設備要因の両者を合わせたガイドラインであることが望ましい。つまり両者からからなる救命率に基づくガイドラインが必要である。そこで,ランナー人数・First Responder割合・AED数・サイン数に応じた救命率の確率分布を明らかにする。この確率分布の提示にはこれまでに構築したMulti-Agent-Simulationを応用し,確率分布の比較からガイドラインに資する知見を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後の研究の推進方策に示したシミュレーションに必要な調査の実施が困難だったため延長申請を行った。このため次年度使用額が発生した。この予算はシミュレーション実施の解析に対象地の調査・打合せ費用・必要機器の追加購入・資料整理の補助業務・シミュレーション実施の補助業務依頼・対外発表などに使用する。
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