本研究は、学部段階の設計演習において、学生の構造造形能力を格段に向上させることを最終目標とし、必要な教育コンテンツ=構造計画技法を整理し体系化することを目的とした。 RC構造と鉄骨造を組み合わせた米子市公会堂、RCの部分的なシェル構造要素、ボックスガーダー構造を導入した広島世界平和記念聖堂、鉄筋コンクリートの版状架構を用いたヴェニスビエンナーレ日本館、RCシェルの大屋根をガーダーで支持した駒沢公園オリンピック体育館、プレートガーダー格子構造を採用した武蔵野美術大学アトリエ棟などの設計過程分析を実施し、建築デザインの過程で構造的な構想アイデアが生じて、建築設計に織り込まれることによって計画の基本線が安定して発展していく実相を明らかにした。以上の成果は日本建築学会計画系論文集に発表するとともに、順次英文誌Japan Architectural Reviewにて翻訳論文を発表している。 以上の内容が建築設計教育の現場に役立ちうるものを検証するために、ハワイ大学建築学科で遠隔授業を実施して、学生からの好評を得た。 設計教科書『建築デザインの構造と造形』の内容に増補する原稿を整備し、図版の制作や全体校正の段階に入っている。10月ないし4月を目処に出版し、設計教育の現場に供する予定である。 この教科書はこれまで、三重大学、名古屋工業大学、千葉大学、愛知工業大学、名城大学などで採用されており、架構形態の造形教育を、地震国の建築設計演習における標準的教育内容として定着させることに役立つと考える。
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