本年度は、建築現地調査及び史料調査を国外・国内にて行った。建築調査として、フランス、スイス等で、軍用技術を用いた事例や、架構方法の違いに基づいて建築事例を現地調査した。史料調査では、フランス国立図書館、ニース大学アジア図像資料館などで調査を行った。国内でも、前近代の城郭建築、近代の軍事建築として善通寺、弘前、旭川等に残る、陸軍式の建築の実地調査を行った。史料調査では、北海道大学図書館、東京大学図書館等にて、日本の軍用建築に関する史料収集を行った。 これにより、19世紀から20世紀初頭にかけての植民地建築の建築図面・古写真などの図像・文書史料の読解・解析を行い、軍事建築の設計意図、また建設時の状況などに関して明らかにすることができた。 海外研究者との学術交流では、国際学会・研究会参加の機会等を利用して、学術知識の交流に努めた。ベトナム・ハノイにて植民地建築研究者エマニュエル・セリース氏、ハノイ建設大学のゴック・ラン・チュオン、グエン・マン・チー氏、ホーチミン市建築大学のグエン・カム・ズオン・リー氏らと研究協議を行った。 以上の成果として、那覇市及び台湾・台北市において開催されたシンポジウム「アジアの蒸暑地域における鉄筋コンクリート造建築のサステナビリティ:保全に向けた課題」にて、ヨーロッパ・アメリカ発の熱帯地域の建築活動の系譜及び軍用技術の果たした役割について研究発表を行い、フランス、ベトナム。台湾等の近代建築研究者と学術協議をおこなった。また、中国・南京で開催されたICOMOS(世界記念物会議)城郭部門会議にて、アジアの城郭建築の比較研究に関する学術講演を行った。
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