研究課題
申請者は第一次アヘン戦争(1839-1842)以降の中国、日本、台湾を含めた東アジア沿岸部の港湾研究に取り組んできた。とりわけ、上海、香港、横浜、神戸、長崎、高雄を実例として、港湾をめぐる水際権利と都市景観の変容、貿易形態と荷揚方法との関係、および桟橋や築港工法の変遷、を究明し、石やコンクリートの材料供給を明らかにした。それらのケーススタディをベースに近代東アジアの港湾の形成と各国政府による港湾システムの構築について総合的に究明した。本研究を通して、港湾は陸と水の間に存在する空間で利権をめぐる争いがそのまま港湾空間の形成に反映させられたことが如実にわかった。なお、近代の港湾は国際経済活動のフロンティアであったため、各国が競って最先端な築港技術を導入し、安全な港湾を建設していたプロセスも明らかになった。最後に、強調したいのは、本研究の中盤からコロナ禍で研究を実施したため、当初、予想していなっか観点である「検疫」の角度からも、近代東アジアの港湾空間を分析するようになった点である。これにより、近代、各港湾には必ず「検疫区域」、「隔離区域」、「検疫に関する港則」が設けられたことが判明した。なお、近代は現代の医学のように発展していなかったため、港湾における検疫や防疫のインフラは常に整備されていた。検疫の観点から港湾空間を論じた点は本研究にとって望外の収穫である。今後は本研究助成期間中の研究成果を学術書にまとめることに努める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
"Studies in Construction History, Proceedings of the Tenth Annual Conference of the Construction History Society", ISBN: 9-780992-875190
巻: 1 ページ: 369, 381
『日本建築学会計画系論文集』
巻: 805 ページ: 1147,1156
『建築史学』
巻: 78 ページ: 20,41