研究課題/領域番号 |
18K04545
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
松本 剣志郎 法政大学, 文学部, 准教授 (80468719)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 三都比較 / 町共同体内完結 / 明治初期史料 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルスの蔓延状況をみながらも、今年度は各古文書保存機関の了解を得て調査を実施することができた。姫路市立城郭研究室にて酒井家文書の閲覧(4月)、京都府立京都学・歴彩館にて三条衣棚文書の閲覧(6月)、大阪府立中之島図書館にて菊屋町文書等の閲覧(6月・10月)、愛媛県歴史文化博物館にて小松藩士森田家文書等の閲覧(8月)、東京都公文書館にて東京府文書の閲覧(9月・10月)上越市立歴史博物館にて榊原家文書の閲覧(11月)、たつの市立歴史文化資料館にて龍野文庫の閲覧(12月)、群馬県立文書館にて酒井家文書の閲覧(3月)と、充実した調査ができた。 とりわけ京都・大阪・愛媛の調査で、江戸・京都・大坂の三都におけるインフラ維持管理の比較検討材料をいくつか得る事ができたのは幸いであった。とはいえ江戸に比較して、京都・大坂におけるインフラ維持管理関係史料は格段に少ない。これは京都・大坂におけるインフラ維持管理の仕組みが、ほとんど町に依拠していたためで、町方史料からしか関係史料に至れないからだと思われる。また特に京都では、その町方史料にも関係する史料があまり見当たらないのは、インフラ維持管理が町共同体内で完結し、史料として残りにくいためではないかと推測している。 一昨年からのコロナ禍で各地に調査に赴くことができないなか、明治初期の東京関係史料の分析に着手したのは思わぬ発見につながった。明治初期にはいまだ江戸時代以来の仕組みが残存している。逆に明治初期の史料から近世のインフラ維持管理のあり方を照射することも可能である。新たな研究の方法論を見出したことは今後の研究の大きな推進力となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国各地への古文書調査を順調に実施することができ、インフラ維持管理関係史料を多数得られている。2022年3月の学会発表により、研究成果を一部まとめることができ、また今後の研究方針も定まった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き古文書調査を実施するとともに、研究成果の還元に努める。前年度より実施している酒井家文書(群馬県立文書館)および大阪府立中之島図書館所蔵文書の調査を進める。新たにもりおか歴史文化館所蔵文書の調査を実施したいと考えている。江戸留守居の記録から江戸のインフラ維持管理関係史料を抽出できるのではないかと思われる。 7月に実施される近世史サマーセミナーの全体会での報告を依頼されている。本研究課題による成果を発表する予定である。また2022年3月の学会報告をもとにした論文が、シンポジウムの論文集として2023年度中に刊行予定である。以上のようのかたちで研究成果を還元する。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費として大学院生による収集古文書画像の整理・解読作業の実施を見込んでいたが、適当な人材を確保することができなかった。またマイクロフィルムのコピー代等も見込まれたが、古文書保存機関においては無料で撮影が認められたため、その他費目も低額にとどまった。そのため研究代表者による調査旅費が主な使用費目となっている。 次年度においても状況は変わらず、主に研究代表者による調査旅費で研究費を使用する。残額はそれほど多くないので、3回ないし4回の調査で研究費はすべて使い切るものと思われる。
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