研究課題/領域番号 |
18K04546
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
山崎 幹泰 金沢工業大学, 建築学部, 教授 (10329089)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 建築模型 / 模写模造 / 文化財 |
研究実績の概要 |
本研究は、文化財の模写模造事業で作成された、国宝建造物の精緻な建築模型を後世に伝えていくために、必要な対策を検討するものである。戦後から現在まで、文化財建造物の10分の1サイズの精緻な模型が制作されてきた。しかし近年は、博物館で展示される機会がほぼなくなってきている。これらの貴重な模型を後世に伝えていくために、1)模型の制作者、制作年代および制作背景を調査する、2)模型の仕様を記録化し、将来の修理に備えるとともに、実際の建築と模型との比較から模型の特徴を明らかにする、3)同種の模型の追跡調査を行い、これらの模型の現状と保存活用における課題を把握する。以上の調査研究を通して、模型の保存活用における課題を把握することを、目的としている。 平成30年度は、模型の追跡調査として、以下の調査を行った。東大寺鐘楼模型・観智院客殿模型(文部科学省情報ひろばにて展示中)、沼名前神社能舞台模型(鞆の浦歴史民俗資料館にて展示中)、金地院東照宮模型(国立科学博物館筑波研究施設にて保管中)、唐招提寺宝蔵模型・崇福寺大雄宝殿模型(九州国立博物館にて展示中)の所在確認、写真撮影、所有者、管理者へのヒアリングおよび関連資料の収集。金沢工大保管の興福寺北円堂模型・唐招提寺金堂模型・松本城天守模型・吉村家住宅模型・光浄院客殿模型の5体の仕様調査と写真撮影。模型の製作背景の調査として、明王院五重塔、正福寺地蔵堂、沼名前神社での現地調査。建築模型の類例調査として、東村山ふるさと館、東京大学総合博物館小石川分館建築ミュージアム、三菱一号館ほかにおける建築模型の調査。また、東京国立博物館資料館において、オリンピック東京大会日本古美術展に関する資料調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
建築模型の研究として当初計画した三つの方法と目標について、1)模型の制作背景の調査については、模写模造事業でこれまで制作された39体の模型について、名称と制作年代については文化庁の記録により確認できた。一方で、制作者については部分的にしか判明せず、判明した分についても裏付け調査には至っていない。2)模型の仕様の記録化と特徴分析については、本学で保管中の模型5体について仕様調査と写真撮影を行った。一方、他館所蔵の模型については、調査上の制限も多く、写真撮影とヒアリングが中心となっている。3)同種の模型の追跡調査については、模写模造事業の模型は39体中16体が確認でき、残り23体について情報収集を続けている。同事業以外の建築模型についても、情報収集を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
所有者から他館への建築模型の貸し出しや、展示終了による保管庫へ移動などが思いのほか多く、建築模型が抱える展示上の問題点を浮き彫りにしていると考えられる。また、これらの模型の多くが一時期、国立歴史民俗博物館に集められながら、その後散逸した経緯なども明らかになってきた。模型の追跡調査を行う上で、模型制作時の情報のみならず、完成後の展示活用の状況、移管の経緯などにも、建築模型が抱える問題点があると見られる。2019年度においては、1)模型の制作背景の調査については、既に判明した制作者に関するさらなる情報収集、2)模型の仕様の記録化と特徴分析については、本学保管の12体を中心に実施、3)同種の模型の追跡調査については、模写模造事業の模型残り23体について、少なくともその半数を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 使用額は当初のほぼ計画通りであり、物品費、国内旅費などとして使用し、研究を遂行した。ただし、学生アルバイトを要する作業の準備が進まず、人件費・謝金が発生しなかったために次年度使用額が生じた。 (使用計画) 2019年度においても、当初の研究計画に沿って、物品費、国内旅費、謝金等として経費を使用して、研究を遂行する予定であり、次年度使用額はその一部に当てる。使用計画について変更はない。
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