研究課題
本研究は、平安時代から南北朝時代頃の后妃・女院の儀礼と生活様態の変容を住宅史の視点から明らかにすることを目的とする。今年度は、前課題より推進してきた、儀礼空間における女性の座を示す打出という舗設の変遷を明らかにするために、指図に示された打出を収集した。大日本古記録・史料大成・続史料大成等に所収された指図を複写する作業を行った。具体的に打出の図が示された、廣義門院御産愚記(延慶 4 年(1311)4 月 11 日条、姫宮御五十日(『公衡公記』所収)、『花園天皇宸記』 齋場御覧 公卿淵酔(正慶元(1332)年11月12日条)を見出した。これにより打出の舗設は、南北朝時代まで継承された。室町殿まで継承されることが予見され、次年度の課題としたい。また、国文学・服飾史との共同研究により、2回の口頭報告等を実施した。(1)天徳4年(960)内裏歌合の場や、皇后宮寛子春秋歌合の場(天喜四年(1056)の復原を推進し、和歌文学会の例会で発表した。春秋歌合は、里内裏である一条院が会場とされた。渡殿を公卿座、簀子を殿上人、廂の御簾内を女房座とする構成は、天徳内裏歌合に準じるが、左右の女房装束を互い違いにするなど、創意に富んだ演出が生み出された。この場合、左右女房は歌合の趣向に合わせて左・春、右・秋の装束を着用しているが、几帳にはあやめ草模様が用いられ、季節に即した夏仕様であった点を示した。(2)頼通水閣歌合の復原を推進し、平泉文化フォーラムにおいて報告した。国際的な成果の発信として、米国メトロポリタン美術館の源氏物語展に際して、源氏物語の六条院研究の成果を、英文図録にまとめた。
2: おおむね順調に進展している
国文学・服飾分野との共同研究により、舗設の色彩や文様の復原をするなど、新しい視点が得られた。
昨年度は、御五十日や、齋場御覧公卿淵酔における打出の指図を見出した。本年はこれらの行事について、さらに詳しく検討を進めたい。
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平泉文化研究年報
巻: 19号 ページ: 55-65
Studies in Japanese Literature and Culture Center for Collaborative Research on Pre-Modern Texts, National Institute of Japanese Literature
巻: 1 ページ: 39-55
http://id.nii.ac.jp/1283/00003664/