今年度は、論文の発表のみである。補助事業期間全体を通じた成果は次の通りである。 第一に、近世期の九州地方において諸藩が年貢米徴収のために設けた御蔵所の建築遺構や見取図等の史料を調査し、熊本藩、柳川藩、小倉藩の御蔵所の建物配置の型式を明らかにした。 第二に、近世期の日本における幕府や諸藩の御蔵所の空間構成原理及び地方性に関する3つの仮説を検証し、次の事柄が確かめられた。1)御蔵所の建物配置には2つの基本形があった。2)藩の事情がよく表れる計屋(検査所)は、御蔵所の建物配置を特徴付ける主な要素であった。3)御蔵の戸前に掛かる長庇は、計屋としての用途を獲得したり、回廊を形成したりして、御蔵所をより機能的にした。 第三に、本研究を発展させるため、阿武隈川中流域の信達地方における郷蔵関連施設及び、河口港における幕府の御城米御蔵所の空間構成を検討した。その結果、荒浜港における御城米御蔵所の空間構成の特異性が明らかになった。
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