研究課題/領域番号 |
18K04552
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研究機関 | 横須賀市自然・人文博物館 |
研究代表者 |
菊地 勝広 横須賀市自然・人文博物館, その他部局等, 主査・学芸員 (80321892)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 横須賀製鉄所 / 横須賀造船所 / 建築技術史 / フランス / 中国 / 技術移転 |
研究実績の概要 |
当該年度も新型コロナウィルス流行が続いたため海外での資料収集調査を取りやめざるを得ず、フランスやフランス系建設技術の移転施設などの現地調査を実施できなかった。 中国における西洋技術の導入を扱った近代技術史、科学技術史全般など、先行研究の確認範囲を広げたところ、今後の研究進展につながる可能性のある情報源がいくつか見いだされた。まず、「巫碧秀『福州船政局の歴史的究明 : 近代造船技術の導入を中心に』(慶應義塾大学博士論文)」は福州船政局と横須賀製鉄所の対比的研究成果も含むものであり、本研究でも確認しておくべき資料の所在情報も確認できた。さらに、『国際経営論集』などに掲載された田育誠氏による一連の研究成果、宝鎖氏が著した『清末中国の技術政策思想―西洋軍事技術の受容と変遷』及び『清国における軍事技術政策の変容 : 1860年-1894年』(東京大学博士論文)も本研究と関連のある先行研究で、この中で、特に、いわゆる洋務運動に関する研究成果とその出典資料に示唆に富むものが多かった。以上のの先行研究から、福州船政局を監督したフランス人ジケル、横須賀製鉄所首長ヴェルニーが、ともに、ほぼ同時期に寧波の地で勤務していたことも確認できた。同時期にフランスの指導によって建設された両施設の指導者がともに寧波勤務を経由している点は本研究でも注視しておきたい点である。先行研究によれば、ジケルは中国語が堪能で中国側での人物的評価も高かったと言われており、このこともまた中国に留まって福州船政局の指導者に就任した背景にあるものと考えられる。ヴェルニー本家には福州船政局のものと考えられる古い全景写真が残されているが、中国におけるフランス系技術を導入した施設全般に関する先行研究の確認作業によって本研究にとって有益な情報が得られてきたことから、今後も当該分野の資料収集を続ける計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、昨年度と同様に、新型コロナウィルス流行の影響もあって、フランスやフランス系建設技術移転地などの国内外の現地調査を実施することができず、本研究課題でも重要視していた、現地調査を実施しての新史料の発見や収集の面で、研究計画当初に目指していた作業を目標通りに行えなかった。しかし、収集済みの史料分析、国内外の文書館の電子データの閲覧と分析によって新知見と新史料収集の蓄積が進んだこともあり、研究に幾分の進展はあったものとして自己評価を「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス流行の影響もあって、海外での現地調査が実施困難な状況はしばらく続くものと想像されることから、現地調査の重点を海外から日本国内に移して、国内での類例調査を当初計画以上に充実させることによって、海外学術調査が実施できない可能性が高いという課題の解決を図るべく、研究計画の再構成と研究方法の見直しを進める予定である。フランス側での資料収集作業については、収集対象を特定の中国の造船施設中心に切り替えて資料探索の効率と精度を上げる計画である。さらに、中国に存在するフランス系の技術を取り入れた造船施設の歴史を扱った先行研究や研究資料の資料探索と収集にも着手したいと考えている。これまで、横須賀製鉄所首長のヴェルニーが来日前に勤務していた寧波の造船所に関する資料探索に力を入れてきたもののフランスと中国で続けてきたが建築史的分析に耐え得る資料の収集には至っていなかった。今後は、より情報や資料の多い福州船政局などに主対象を広げることにより、収集資料数の増加を見込んでおり、建築史的分析がこれまで以上に進むものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス流行の影響により市外県外への出張制限期間が長かったことによる旅費の未執行と出勤自粛や職場の閉鎖期間が長かったことや出張ができなかったことに伴う整理対象資料の減などによる謝金対象者の出勤日数の少なさが主たる要因となります。
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