研究課題/領域番号 |
18K04554
|
研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
勝又 暢久 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (60534948)
|
研究分担者 |
千葉 誠 旭川工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (80390384)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | マイクロカプセル / インフレータブル構造 / 構造硬化 / 構造剛性 / 発砲硬化剤 |
研究実績の概要 |
構造に関する研究では,インフレータブル構造を構成するなめらかな表面を持つ膜材に,マイクロカプセルを担持するための方法を検討し,スポンジ状の形状記憶ポリマー(SMP)内に担持して,膜材とのサンドイッチ構造としてインフレータブル構造を設計する方針を得た. またマイクロカプセルを遠隔・非接触で破壊する方法として,外気圧力と蒸気圧の関係から,加熱による方法が妥当という結果を導いた.また蒸気圧で破壊されるために必要なマイクロカプセルの諸元(直径や板厚など)についても,力学的に考察した. マイクロカプセルの生成に関する研究では,硬化剤内包カプセルの合成方法について検討を深めた.硬化剤内包カプセルは,TDIとエチレングリコール,もしくはグリセロールをシクロヘキサノン中で反応させることで,直鎖状,および3次元形状の異なる形態を有するプレポリマーの有機溶媒溶液をそれぞれ作成した.また生成したそれぞれの溶液に必要試薬を添加後,グリセロールを溶解させたSDS水溶液を攪拌しながら少しずつ滴下し,300rpmの撹拌条件下で40min-24hr保持することで合成できることが明らかになった. またプレポリマーが直鎖状,ならびに三次元形状と異なる条件で生成されたマイクロカプセルにおいて,カプセル内部構造について調査した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロカプセルの非接触破壊による材質的かつ幾何学的剛性向上に対して,マイクロカプセルの非接触破壊方法や担持方法についての指針を得た.また発泡倍率に対するマイクロカプセル必要量と,その必要量をスポンジに担持する場合の含有割合も検討し,設計の範囲内である事も確認されている. マイクロカプセルの生成については,実績概要に記載した工程で合成したカプセルの内部構造はいずれの条件で合成したものでもカプセル外層付近に見られる高密度の構造体(以下シェル構造)ならびにカプセル内部に位置する低密度の構造体(以下スポンジ構造)から構成されていることがわかった.また,反応時間の増加とともにスポンジ構造の割合が低下し,反応時間24 hにおいてはそのほぼすべてがシェル構造となることが明らかとなった.また,断面像より算出したスポンジ構造の割合はプレポリマー形状によってあまり変化しないが,スポンジ構造自体の密度は直鎖状プレポリマーを用いて合成したカプセルの方がやや低いという結果も得た.これらの結果から,マイクロカプセルを設計する上での指針が得られている.
|
今後の研究の推進方策 |
本提案手法の実現性については,今年度までの検討で明らかになった.次年度においては,発砲硬化層と気密層を有するサンドイッチ膜材によるインフレータブル構造の構造特性(曲げ剛性や座屈強度など)において数値解析をベースに検討を進め,本提案の新たなインフレータブル構造の優位性を示したい. またマイクロカプセル合成においては,今年度の結果から,カプセル内部構造としてみられたスポンジ構造の細孔に硬化剤の有機溶媒溶液が内包されていると考えられ,反応時間とともにカプセルに内包される硬化剤量が減少する可能性が考えらた.そのため,宇宙用構造材料として必要な強度を有し,かつ出来るだけ多くの硬化剤を内包するカプセル合成条件を探索することが次年度の重要課題である.また,プレポリマーの形状によりスポンジ構造の密度がやや変化しているように見られるが,これについては定量的な評価には至っていないため,あわせて調査する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
消費税の変更や価格変更により,予定使用額が変更したため.
|