研究課題/領域番号 |
18K04555
|
研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
中田 大将 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (90571969)
|
研究分担者 |
渡邉 力夫 東京都市大学, 工学部, 准教授 (20308026)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 二相流 / ロケットエンジン / 蒸気圧 |
研究実績の概要 |
亜酸化窒素(Nitrous Oxide, N2O)は常温での蒸気圧が極めて高く(~7MPa),自己加圧による簡素な供給系を構築可能である.米国の有人宇宙船Space Ship 1で用いられた事例を皮切りに,小規模なロケットエンジン,特にハイブリッドロケットの酸化剤として広く利用されている.一方で,押しガスにより一定圧で加圧される従来の供給系とは異なり,ある初期圧力・温度で充填されたN2Oの排出流量履歴を正確に予測することは容易ではない.これは蒸気圧や蒸発潜熱の温度依存性が極めて大きいためである.本研究課題では自己加圧供給管路における流動様式を定量的に把握するため,下記の試みを実施する. A) タンク内温度成層の把握,B)非定常二相流流動様式の把握,C) 二相流熱伝達特性の把握 Aについてはタンク内に複数本の温度センサを挿入し,液排出と共にタンク内温度分布がどのようになるかを観察する.Bについては流路クオリティの把握,気泡径,数密度分布,気液速度の独立観測により流動様式および圧損特性への影響を明らかにする.Cについては熱流束計やサーモグラフィを用いて管路への熱収支を把握する.これらの情報を総合し,実験結果を説明,補間する流量履歴推定モデルを提案する.CFD計算を東京都市大学が実施する. H30年度はAおよびBの半ばまでを実施済みであり,タンク内の気相部分に大きな温度成層が存在することや,高速度カメラを用いた気泡径,平均流速の把握などが実現出来ている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では自己加圧供給系における流量予測モデル構築実現のため,3つの観測手法による実現象の把握を試みている.1年目の課題として挙げられたA)タンク内温度成層の把握,B)二相流流動様式の把握については下記の通り順調に進展している. A)タンク垂直方向に10点の計測点を設けたタンクによる温度成層観察を実施し,気相部分では大きな温度成層が出来ているが液相部分ではほぼ均一温度と見なせることが分かった.また,タンク外壁面はほぼ外気温であり,断熱条件によってモデリングすることが妥当であると判断された. B)流路可視化管を高速度カメラで撮影し,気泡径と平均流速を明らかにした.気泡径は条件にもよるがおよそ0.1-0.3 mmであり,平均流速は1-5 m/s程度であった.概観から全体が気泡流となっており,環状噴霧流ではない.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の方策として,計画通りボイド率の計測や気液速度の独立計測,二相流熱伝達特性の把握などを実施する.ボイド率計についてはfFオーダーの静電容量計を既に購入しており,まずはアクリル管路外壁への電極敷設による計測を実施,その後高精度での計測が可能な管路内への電極敷設を検討している.気液流速の計測については異なる波長を用いたドップラー型超音波流速計を適用する.熱伝達特性については圧力・温度計測値から流路エンタルピを推定すると共に,管壁温度のサーマルイメージを取得し,伝熱量を推定する. この他,下記の試みを検討している.1つは,自己加圧状態のみならず,積極的に押しガスでの加圧を行うことにより,二相流流動様式に及ぼす影響を幅広いパラメタで取得することである.この他,実際に供給管路をハイブリッドロケットエンジンに接続し,燃焼室の燃焼振動と上流供給管路との相互カップリングについて周波数特性などの観点から評価を行う.得られた実験情報からモデリングに重要なパラメタを見極めると共に,CFD計算との整合性を確認する.
|