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2019 年度 実施状況報告書

数理モデルに基いた流れ場の種類によらない新しい層流-乱流遷移CFDモデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 18K04556
研究機関東北大学

研究代表者

久谷 雄一  東北大学, 工学研究科, 助教 (00794877)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードγ-SSG/LRR-ω RANS遷移モデル / Directed Percolation
研究実績の概要

本研究では,流れ場の種類によらないチューニングフリーな層流-乱流遷移を予測する数値流体計算モデルのを構築を目指している.

昨年度は代表的なRANS (Reynolds-averaged Navier-Stokes equation) 遷移モデルの一つであるγ-k-ω RANS遷移モデル(Menter et al. 2015)を有限体積法数値計算ソルバーに実装し,テスト計算を行うことで既存モデルの理解に努めた.γ-k-ωモデルでは一般的な圧縮性流体の支配方程式に加え,乱流エネルギーkと比散逸率ωの輸送方程式を解くことで乱流をモデル化し,間欠度γの輸送方程式を解くことで遷移現象をモデル化している.

当初はこのγ-k-ωモデルに使用されている遷移現象に関係する臨界数をDirected Percolation(DP)クラスの臨界数に置き換えることを予定していたが,既存RANS遷移モデルの理解が進むにつれて,非等方な三次元流れ場に対してのγ-k-ωモデルの予測精度が当初想定していた以上に優れていないことが示された.そこで本年度は,まず既存のγ-k-ωモデルよりも非等方な三次元流れ場をより正確に予測できるRANS遷移モデルの構築を行った.具体的にはkとωの輸送方程式の代わりにレイノルズ応力の輸送方程式を解くReynolds Stress Model(RSM)と間欠度γの輸送方程式を組み合わせることにより,非等方な三次元流れ場においても乱流および遷移をより正確に予測出来るモデル(γ-SSG/LRR-ω RANS遷移モデル)の構築を行った.新たに構築されたγ-SSG/LRR-ωモデルにおいてもまだ経験則に基づいた遷移臨界数が使用されているが,来年度にこれらの遷移臨界数をDPに基づいた臨界数に置き換えることを検討する.また,γ-SSG/LRR-ωモデルは2020年1月に米国で行われた学会(AIAA SciTech 2020)でも発表し,現在はジャーナル論文化の準備も進めている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度はまず研究室が所有する数値計算ソルバーに既存の遷移モデルの一つであるγ-k-ω RANS遷移モデルを実装し,既存モデルの理解に努めた.このとき,非等方な三次元流れ場においてγ-k-ωモデルの乱流および遷移の予測精度が当初想定していたよりも良くなかったため,今年度は非等方な三次元流れ場においても乱流および遷移現象をより正確に予測出来るγ-SSG/LRR-ω RANS遷移モデルを新たに構築した.

またDPクラスに属する臨界数を用いて新たにRANS遷移モデルを構築するには,DPクラスの臨界指数と流体物理を結びつける特徴的な物理量(遷移現象に関係し局所的に計算されるレイノルズ数)を導き出す必要がある.そのためにはRANSよりも流体物理の再現性が高い数値計算を行う必要があり,今年度はそのためのLES (large eddy simulation) 計算の準備も進めた.

当初の予定では既存の遷移モデルをベースにDP臨界指数に基づく新しい遷移モデルを構築する予定であったが,初年度にベースとなる既存の遷移モデル自体の改善が必要であることがわかったため,その分進捗状況は当初の予定よりは少し遅れていると言わざるを得ない.しかし,非等方な三次元流れ場に対して既存の遷移モデルよりもより正確に乱流および遷移現象を予測出来るモデルを新たに構築出来たことは一つの成果であると考えている.

今後の研究の推進方策

今後は新たに構築されたγ-SSG/LRR-ωモデルに使用されている遷移の臨界点を決定付ける臨界数をDPに基づく臨界数に置き換えることを検討する.そのためにはDPクラスの臨界指数と流体物理を結びつける特徴的な物理量(遷移現象に関係し局所的に計算されるレイノルズ数)を導き出す必要がある.

先行研究では遷移に関連した多くの局所レイノルズ数が提案されている.そこで今後はこれらの局所レイノルズ数とDPクラスの臨界指数についての関係性を検証することになる.一般に,高精度に層流-乱流遷移の数値計算を行うにはDNS (direct numerical simulation) が必要となるが,Lardeauら (2012) はLESでも層流-乱流遷移を捉えることが出来る格子点数とサブグリッドスケールモデルを示している.彼らの研究では平板上に逆圧力勾配を与えることにより剥離流れを誘発し,層流-乱流遷移を起こしている.そこで本研究でもLardeauら(2012)が行った剥離を伴う平板乱流境界層のLESを行い,先行研究で提案されている局所レイノルズ数とDPクラスの臨界指数についての関係性を検証し,得られた知見をもとにDP臨界指数に基づいた新しい遷移モデルを構築することを目指す.

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響により年度末の出張を見合わせたため,使用予定であった旅費が残った.
次年度に旅費として使用予定だが,このまま出張が出来ない状況が続けば,高精度数値流体計算に必要なワークステーションの購入費にあてる.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Laminar-Turbulent Transition Modeling with a Reynolds Stress Model for Anisotropic Flow Characteristics2020

    • 著者名/発表者名
      Shunya Endo, Thanakorn Sujisakulvong, Yuichi Kuya, Taketo Ariki, Keisuke Sawada
    • 学会等名
      AIAA Scitech 2020 Forum
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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