研究課題
多体力学系とは,1つの天体の重力のもとでの物体の運動を考える2体問題に対して,重力を及ぼす天体が2つ以上の場合を指す.天体が作る多体力学系の平衡点近傍に存在する周期軌道は図1のような安定多様体,不安定多様体という力学的な構造を持ち,その構造を利用することでより低エネルギーな軌道移行が実現できることが明らかになってきた.本研究では,設計の自由度を高めるため多体力学系の効果を利用した低推力宇宙機の軌道設計を行った.特に「多体力学系の力学構造の効果を最大限利用するためには,低推力をどのように加えるのが良いのか」を明らかにするための検討を行った.多体力学系の平衡点あるいは周期軌道の近傍の運動を考えたときに,推力を加えない力学系では宇宙機の運動は初期状態が安定な固有ベクトル上にある場合,外力を使わずに平衡点に到達することができる(安定多様体).一方,低推力を加えた運動では,平衡点に到達できる初期状態の集合は,飛行時間・消費燃料に応じて決まる領域であり,消費燃料や飛行時間が大きいほど大きな楕円体となる.この低推力により拡張された領域を「低推力に拡張されたマニフォールドダイナミクス」と定義し,消費燃料を評価関数とする最適制御理論により設計する方法について考察した.多様体に沿った線形化を行うことで最適レギュレータにより多様体を拡張することに成功した.またその結果,飛行時間を長くした場合に,線形化を用いるため,誤差の増大により非線形性の影響が顕著になることが問題となることが明らかとなった.このため,多様体の構造に基づき繊維軌道を適切に選択することで非線形性の影響を抑制する方法について考察した.提案手法により,太陽ー地球ー月4体問題を太陽地球系の三体問題と地球ー月系の三体問題により近似したモデルにおいて低推力により多様体を接続する軌道を設計することに成功した.
1: 当初の計画以上に進展している
本来は1つの三体問題の系における低推力軌道を設計する予定であったが,手法が十分確立したため太陽ー地球ー月4体問題を太陽地球系の三体問題と地球ー月系の三体問題により近似したモデルに適用し,低推力により多様体を接続する軌道を設計することに成功したため.
本手法をさらに惑星間の移行に拡張し効率の良い惑星間遷移を実現するためには,ゲートウェイ構造をなす軌道の設計が不可欠である.次年度は,その中心となるトランジット軌道の特徴を明らかにし,そのための低推力の制御法を検討する.
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Acta Astronautica
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