研究課題/領域番号 |
18K04561
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
川合 伸明 熊本大学, パルスパワー科学研究所, 准教授 (60431988)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超高速衝突 / 高速度可視化計測 / 衝撃波伝播 |
研究実績の概要 |
悪化し続けるスペースデブリ環境を背景に、宇宙機のデブリ衝突に対する損傷軽減化の重要性は増している。しかしながら、現状、デブリ衝突への耐性は構成材料の機械的性質に頼るのみである。そのような状況に対し、本研究課題では、応力波の多重反射に伴い進展する超高速衝突損傷に対して、応力波の反射条件を制御することにより、衝突損傷を制御・抑制する方法論を提案することを目的とし研究を推進している。本研究課題においては、超高速衝突損傷機構を理解することが最も本質的であり重要なことである。そのため、超高速衝突にともない被衝突体内部に生じる応力波伝播過程および損傷形成・進展の実時間可視化計測手法の確立にも取り組んでいる。2018年度までの研究において、直線偏光シャドウグラフ法および白色透過光シャドウグラフ法による超高速衝突現象の実時間同時撮影技術を確立し、損傷進展・形成と伝播する応力場の関係性を評価することが可能となった。2019年度では、偏光シャドウグラフ法のレーザー光源および光学系を改良し、より鮮明な応力場可視化が可能である円偏光シャドウグラフ法による超高速度撮影を行うことに成功した。また、損傷形状の撮影において損傷表面からの散乱光による撮影を行うことにより、透過シャドウグラフ法では撮影不可能であった損傷の表面形状の高速度可視化にも成功した。これらの改良された高速度撮影を組み合わせることにより、損傷形成と応力場の関係のみならず、損傷破面・形状と応力場伝播過程との関係性を評価することが可能になった。これまでに確立された超高速衝突破壊現象の実時間高速度可視化技術を用い、被衝突体への異種界面導入による衝突誘起応力波の透過・反射挙動の変化と損傷進展挙動への影響評価に取り組んでいく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度において、円偏光シャドウグラフおよび散乱光撮影による超高速衝突現象の超高速度可視化計測技術を確立することに成功した。当初計画では、直線偏光シャドウグラフ法と白色透過光シャドウグラフ法の組み合わせにより、応力場の伝播過程と損傷の形成・進展過程とを直接比較し、超高速衝突損傷進展機構を評価する予定であった。しかし、円偏光シャドウグラフ法により高精細な応力場分布およびその伝播挙動を可視化することが可能になっただけでなく、散乱光撮影法により損傷形状のみならず損傷の表面形状・破面形状の形成・成長過程を可視化することが可能になった。その結果、当初想定よりも多くの情報を撮影画像から抽出することができ、超高速衝突損傷形成・進展機構の解明に向けて大きく進展したといえる。当初計画と比較し撮影技術開発に重点を置いた結果、異種界面導入による応力波の透過・反射特性および損傷形成への影響評価に関しては、当初計画と比較し若干遅れている状況ではある。しかし、実時間撮影による超高速衝突現象の評価は、本計画のすべての段階において必要な最重要課題であり、その基幹技術が当初計画より優れたものとなったことは研究計画全体としては大きなプラスであり、研究の進捗状況としては順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、2019年度までの成果により、超高速衝突損傷下における応力場の伝播過程および損傷の形成・進展過程の実時間可視化計測技術を確立することに成功したといえる。2020年度においては、確立された可視化技術を駆使することにより、超高速衝突損傷形成・進展機構の解明、被衝突体への異種界面導入による応力波の透過・反射挙動の変化および損傷形成への影響評価に取り組み、最終目標である被衝突体の多層複合化による応力波伝播制御を利用した衝突損傷制御の実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品の価格が当初見積予定額より低額となったことおよび、消耗品数が当初見積もりより少数で済んだことにより、その差額が次年度使用額として生じてしまった。残額に関しては、そのまま次年度の物品費に加えて使用予定である。
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