悪化し続けるスペースデブリ環境を背景に、宇宙機のデブリ衝突に対する損傷軽減化の重要性は増している。しかしながら、現状、デブリ衝突への耐性は構成材料の機械的性質に頼るのみである。そのような状況に対し、本研究課題では、応力波の多重反射に伴い進展する超高速衝突損傷に対して、応力波の反射条件を制御することにより、衝突損傷を制御・抑制する方法論を提案することを目的とし研究を推進している。本研究課題においては、超高速衝突損傷機構を理解することが最も本質的であり重要なことである。そのため、ここまで超高速衝突にともない被衝突体内部に生じる応力波伝播過程および損傷形成・進展の実時間可視化計測手法の確立に取り組んできた。前年度までの研究活動により、偏光シャドウグラフ法および散乱光撮影法の併用による応力場伝播および損傷進展の実時間可視化計測法を確立したことを受け、本年度においては異種界面の存在が超高速衝突損傷の形成過程に与える影響の評価を目的に実験を実施した。脆性的な透明ポリマーであるアクリルと、延性的な透明ポリマーであるポリカーネートを弾道軸上に重ね合わせたターゲットに対して超高速衝突実験行い、異種界面の存在により応力場伝播および損傷進展の挙動が変化する様子を可視化計測することに成功した。実験の結果、ポリカーボネート部分における損傷形状は,異種界面の有無による影響が確認されなかったことに対し、PMMA部分においては,異種界面付近において損傷が拡大する様子が確認された。この界面の存在によるPMMAの損傷拡大に関して、応力場および損傷進展の可視化画像を比較した結果、応力波と界面の干渉が、界面付近におけるPMMAの損傷拡大に寄与しているわけではなく,衝突体の界面部における貫入過程においてPMMAの損傷拡大に寄与する現象が生じていることが示された。
|