研究課題
傾斜機能型アブレータについて,製作手法をホットプレス法からオートクレーブ法に切り替えることによってメーカ製造性の目処を立て,耐熱性能が変わらないことを加熱試験によって確認した.ホットプレスを用いた傾斜機能型アブレータの製造にあたっては,圧縮・加熱成形時にホットプレスの上側熱板と下側熱板に規定の温度差を設けることにより,積層したプリプレグ積層方向に沿って樹脂の溶融粘度を変化させて,圧縮時のアブレータ積層方向に密度勾配を生じさせる.オートクレーブを用いて傾斜機能型アブレータを製造するにあたっては,プリプレグ積層方向に沿って樹脂の溶融粘度を変化させるために,雰囲気温度一定に制御されたオートクレーブ内に温度の異なる領域を作成する必要がある.本研究ではオートクレーブ内の雰囲気温度はホットプレスにおける上側熱板温度と同一と考え,下側熱板に相当する温度領域をオートクレーブ内に作り出すべく,空冷装置をオートクレーブ内に設置した.オートクレーブで製造した傾斜機能型アブレータについて,アーク風洞において加熱試験を行い,耐熱基礎特性を取得した.損耗速度については従来のホットプレスを用いて製造した傾斜機能型アブレータの性能と変わらないことが確認できた.さらに,高価なポリイミド樹脂に代わり,安価で入手性の良いフェノール樹脂を用いた傾斜機能型アブレータを試作し,実現可能性に目処を得た.プリプレグ乾燥工程に改良の余地があるため,次年度は改良を重ねるとともに,加熱試験によって耐熱性能を確認する予定である.
1: 当初の計画以上に進展している
オートクレーブを用いた傾斜機能型アブレータの製造性が確認できたことによって,今年度予定していたメーカ製造性の目処を立てることができた.これに加えて,フェノール樹脂を用いた傾斜機能型アブレータの実現性の目処を得たことはエクストラな成果であると考える.プリプレグ乾燥方法に課題が残っているものの,トライアンドエラーにより十分克服できると考えている.
フェノール樹脂を用いた傾斜機能型アブレータの製造性の目処がたったことを踏まえ,フェノール樹脂を用いた傾斜機能型アブレータの試作改良を進める.この際,プリプレグ乾燥時間をパラメータとして試作を行い,内部欠陥の発生傾向を観察する.また試作した傾斜機能型アブレータについて加熱試験を行い,耐熱基礎特性を取得し,ポリイミド樹脂を用いた傾斜機能型アブレータの性能と比較を行う.
オートクレーブを用いた傾斜機能型アブレータ製造について,当初見込みよりも比較的短期間で達成することできたため,使用するポリイミド樹脂の節約につながったと考えている.次年度はフェノール樹脂を用いた傾斜機能型アブレータ試作を行うことを踏まえ,次年度使用額については加熱試験供試体制作費や試験費用に充当したいと考えている.
すべて 2019
すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)