研究課題
フェノール樹脂を用いた傾斜機能型アブレータについて,乾燥工程の改良を行うことで樹脂の含浸ムラを抑制し,加熱試験中の層間剥離の低減につなげることが出来た.乾燥工程の改良においては,溶媒に溶かし込んだフェノール樹脂の脱泡に時間をかけることによってプリプレグの安定化を図った.また歩留まりを犠牲にすることによってより安定したプリプレグを使用することを目指した.乾燥工程を改良して製作したアブレータについて,X線CT撮影を行ったところ,昨年度試作した傾斜機能型アブレータに比べて樹脂の含浸ムラが抑制されていることが判明した.一方でアーク加熱風洞において加熱試験を実施したところ,昨年度の加熱試験に比べて層間剥離が低減されていることを確認した.残念ながら完全に層間剥離を防ぐには至っていないが,乾燥工程の改良は一定の効果があったと考えられる.フェノール樹脂を用いた傾斜機能型アブレータについて,完全に層間剥離を抑制できていない原因として,ポリイミド樹脂に比べて炭化後の残炭率が小さいことが挙げられる.フェノール樹脂は炭化後の残炭が少ないため,加熱後の層間の強度がポリイミドに比べて弱く,層間が剥離すると考えられる.また乾燥工程中はプリプレグの片面を上方に向けているため,プリプレグの上面は樹脂が少なくなる傾向があるように思われる.このため,乾燥工程中にプリプレグを何度かひっくり返すなど対応を行うことで樹脂の含浸ムラを低減できる可能性がある.
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Trans. JSASS Aerospace Tech. Japan
巻: Vol. 19, No. 1 ページ: 116-122
10.2322/tastj.19.116