本研究は,限られた共通資源を複数の構成要素でシェアする系における資源マネジメントの研究であり,従来のサーバを必要とする集中型制御とは異なる,同報送信を使用した分散型の制御方式で実現することを目標としている.独立分散方式では各個体が独立に電力使用量の計算を行うが,全体のリソース消費状況を各個体に同報し制御を行う. 平成30年度には,過去に試作したヒータユニットに対して,無線による同報機能の基本ソフトウェアを試作し,基本動作の確認を実施した.平成31年度/令和元年度においては,昨年度作成のヒータユニットを使用し,実用性を意識した動作試験を実施し,ヒータユニットの課題を抽出した. 研究の最終年度にあたる令和2年度については,当初計画では動作試験の継続と学会等における発表をメインの活動と予定していたが,新型コロナの影響で海外学会での発表を取りやめ,前年度に抽出されたヒータユニットの問題点の改良のためのヒータユニットの回路設計,および,本研究期間中に新しく着目した電力線通信(PLC)の導入に向けた基礎実験を行なった.ヒータユニットの改良では,ヒータユニットの小型化と複数チャンネル化や,宇宙機での使用を意識したシングルイベント対策としてのリセット機能の強化の設計を実施した.また,PLCについては,低帯域PLC通信ユニットを使用した通信試験を実施し,従来の無線通信(Zigbee)を置換し,通信性能向上の可能性を見出した. 3年間の研究期間を終え,同報送信を使用した分散型の制御を実装したヒータユニットの試作・動作試験を予定通り終了した上で,従来計画の上積みとして宇宙機での使用を想定した回路設計と,PLC通信の応用可能性の確認まで実施することができた.これにより,分散制御の利点を生かしたモジュラーなシステム構築可能な熱制御システムの実現が期待できる.
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