ロケットの各部分離や人工衛星の太陽電池パドル,アンテナ等の展開では,保持部分のひずみエネルギーが瞬時に解放され大きな衝撃が発生する.そのため,宇宙機搭載機器は衝撃耐性確認が必要となるが,コストや工数削減のため,実環境と異なる代替的手法で機器に衝撃が印可される.この場合,衝撃応答の予測と調整が困難であり,過負荷な試験に陥りやすく,開発コストを増加させる原因となっている.本研究では,部分構造合成法を用いて衝撃応答を予測する手法と,一般的に用いられている機械的インパクト式衝撃試験法に汎用的に適用可能な衝撃応答を調整する手法の2つを合わせて提案することにより,試験法の改善を試みるものである. 2018年度は,提案するコンセプトを単純なバネマス系モデルを用いた簡易計算,および単純形状の構造体を用いた試験によって有効性検証を行った. 2019年度は,実際の衝撃試験装置に似せた構造について,構造数学モデルと実際の構造体を用意して理想的な環境下での有効性について評価した.部分構造合成法を用いた予測計算が,部分的に実機試験の結果に合わないことが明確となり,対策を検討した. 2020年度は,予測計算が合わない原因が合成計算に用いる情報の量(合成軸数)に依存することを解析的に解明した.これによって,部分構造合成法を用いた衝撃応答スペクトラムの予測が,試験現場に適用可能な程度の手順で実現可能なことを示した.また,2019年度に製作したモデルを用いて予測と調整の有効性を実証した.さらに,実際の衝撃試験機に適用可能な調整構造体を考案し,実際の衝撃試験機に適用して,予測および調整の有効性を確認した.得られた成果について論文投稿を行った. 2021年度は,新型コロナウィルスの影響で延期されていた宇宙機試験をテーマとした国際会議での発表を行った.また,予測時の誤差要因検討を行い,本手法の使いやすさ向上検討を行った.
|